13・朝起きたら……

第13話

「華」

「う?」


肩を抱かれて鼻腔をくすぐる匂いは、ずっと恋しかった私の大好きな…。


「う?佳彦?佳彦だぁー」

「どうした?華?」


フカフカ柔らかい所に座り私の足の間に佳彦が膝立ちする。


(こんな近い…佳彦、久しぶり…)


手を伸ばしたら消えちゃう?

大好きなのに元妻にそんな事思われたくないよね?


「華?どうした…」

「えっ?」


涙が流れていたのに気付かずに佳彦が私の頬を触るからその上に手を重ねる。


「どうした?悲しい事でもあった?」

「ううん。違うの…」


これは夢。

夢だから言っても良いよね?


「こんな近くに佳彦が居てくれて私を触ってくれて…嬉しい」

「嬉しい?」

「嬉しいよ。大好きなんだもん」

「…!!」


佳彦が言葉を止めて私の腕を引っ張り胸の中に入れる。


「なら、もう一回聞く。何で離婚・・なんて?」

「佳彦の『好きな人』と結婚出来るでしょ?」

「俺の好きな人は、華だよ」

「あぁ、これが夢であって…その言葉貰っただけでも嬉しいよ」


グイッと顎を上げられて佳彦のキスを受け入れる。

体が痺れるような気持ちいいキスに蕩けるそうになり佳彦の服をギュッと握ると佳彦がもっと私を抱き寄せる。


「はっ…なっ…」

「佳…彦」


これが夢じゃなければ良いのに。

恋しい愛おしい男性の腕の中に居る。


「寝ろ、華」

「…そうね。寝るわ。きっと夢だもん」

「…そうだな。俺もお前も望んでいた夢なんだよ」


布団に潜り込むと好きな人の匂いで包まれて意識が遠のく。


「おやすみ、華」

「……み。…彦」


起きたらきっとこれは夢だと思うから寝たくないのに瞼が落ちて意識がプツリと切れた。




「うっ〜ん。頭痛いっ…」


薄目を開け見知ってる天井が映り心臓が高鳴りしてる。


「えっ?あっ?痛っ…」

「飲み過ぎだ。頭くらい痛いだろ?」

「えっ!?あっ!!」


声をかけて部屋に入ってきた男性に驚いた。


「佳彦…部長の……」

「俺の寝室だ。華の家は知らない。答えないし」

「…スイマセン…」


まさか佳彦の…今まで寝慣ねなれた所で寝ていたなんて…。


「朝食出来てるよ。食べるだろ?」

「うん。ありがとう」


起き上がると昨日の服のままでしわだらけになっていた。


「佳っ…!部長、朝食有難いのですけど私…」


私…変な事言ってないよね…?

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