6・必ず頼むもの

第6話

「久しぶりだな。この、珈琲

「私も久しぶりだわ」


久しぶり?

私も久しぶりだけどココに通ってなかったって事?

離婚・・してから知らない事ばかり増えてく…。

そして、ハッと気付く。


「部長?珈琲飲んでる暇ないですよね?」

「珈琲くらい飲んでる時間あるだろ?この後会社に詰めるんだ」

「…そうですけど…」


そう言って店主マスターがトレーにパフェを持って来てくれた。


「はい。お待たせ。華ちゃん」

「わぁ!パフェ!!店主マスター、ありがとうございます」

「……」


私はここの珈琲とパフェが大好きなのだ。

ここに寄ると必ず食べる二品にしな


「華、ここの珈琲とパフェ好きだもんな」

「…そうよ?佳彦にはあげないから」

「俺は遠慮しておくよ」


佳彦は、私が頬張ってるパフェを見ながら珈琲を黙って飲んで食べ終わるまで待ってくれていた。


「佳彦…先に会社に戻っても良いのよ?」

「いいや。俺はこの時間が大切・・だから」


大切・・って…。

元妻の前で一緒に珈琲とパフェ堪能してる時点で、アウトじゃない?


「もう、ご馳走様するわ。ここもお会計するから」

「華?具合悪いのか?パフェ残すなんて…」

「えっ?別に具合悪くないわ」

「パフェ好きなんだろう?最後まで食べろ」

「…えぇ…そうするわ…」


くっ…!

急いで出ようとしたのに大好きなパフェを持ち出されたら逃げれないじゃないの!


「…ちょっと…御手洗行ってくるわ」

「あぁ」


ハンカチを、口に当てて御手洗に駆け込んだ。


「うっ…。気持ち悪い…」


何故か急に吐き気が襲って来た。

最近、離婚して環境が変わったからと思って用を足して御手洗から出た。


「大丈夫か?華」

「えっ?えぇ、大丈夫」


何事も無かったように席に座りパフェを食べる。

気持ち悪さがなくなって食べれるからきっと気のせいね…と思った。

佳彦は、私のその行動に訝しげに見ていたなんて気付きもしなかった。


「さぁ、食べたから会社に戻りましょ」

「あぁ」


お財布を出したら伝票がもう無くて佳彦を見た。


「いくらだった?払う」

部長・・に奢られておけ。華」

「…そこで部長・・の名前出すのズルくない?」

「行くぞ。体調悪くなったら早目に言え」

「…はい?」


店主マスターの気持ちいい声に背中を押されて会社に向かう。

ここからが営業の見せ場。

頑張らないと!

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