5・商談まとまりました

第5話

「沢井さん、ちょっと」

「あっ、はい」


営業にまわる仕度をしていたら部長佳彦に呼ばれて部長のデスクに行き書類を渡された。


「今度の営業先の取り引きだ。確認しておいてくれ」

「あっ…はい」


渡された書類に付箋が付いていた。


『何故、華からの匂いがするんだ?』

「……っ」


気付かれていたし、「言及しない」じゃなかったの?

佳彦のあの一瞬の顔の歪みはコレだった。


「沢井さんっ?」

「急がなくては…失礼します!」

「沢井さん!」


気分も悪くなってきたし…。

智子が通りかかって声をかけて伝える。


「はぁっー…」

「華、大丈夫?」

「あっ、うん。営業に行ってくるわ」

「行ってらしゃい」


出社表に自分の名前の所に『営業』とかざして

オフィスを出る。


「ふぅー…。本当にやりにくい…」


野山さんと何の話していたなんて元夫佳彦に関係ないって思いたいのに…。



「CANZ商事の営業部長の中居佳彦と申します。

今後ともご贔屓の程、よろしくお願いします」

「同じく、営業の沢井華と申します」


何故か部長佳彦と新しい営業先の所にいる。


「……」


私は、その前に数件営業をこなして部長から貰った新規の営業先に行こうとしたら電話が鳴り部長と新規の所に行く事になった。


「CANZ商事さんと取り引き出来るなんて光栄ですよ。いやぁー…有難い」

「こちらこそ、ありがとうございます」


部長が取引先の方と握手して頭を下げるから私も頭を下げる。

そこから、トントン拍子に商談が進み、会社で

その会議が始まる。



「沢井、大きい取ったから直ぐに戻って会議ミーティングだ」

「はい、部長」


佳彦は、これで課長に繰り上がるだろう。

今、課長の席は事情があって不在のまま。

全部、今は部長佳彦が、指示を出してる。


「華」

「!?ぐふっ」


急に名前を呼ばれて咳き込んでしまった。


「なっ、何!?急に…」

「珈琲でもどうだ?」

「えっ?」


立ち止まったのは、結婚・・していた時に

よく二人で通っていた珈琲屋さん。


「別にいいわよ」

「じゃあ、入ろう」

「ちよっ…」


そう言って私の腰に手を回して店内に入る。

懐かしいBGMが店内を流れていて落ち着いた雰囲気が好きで通いつめていた。


「いらっしゃ…いつもので良いかい?」

店主マスター、あぁ」


顔馴染みになっていていつものを頼み席に座る。

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