3・お互いの好きな人は…?

第3話

「どうした?そんな寂しそうな顔して」

「えっ?そんな顔してますか?」


寂しそうな顔って…さっきの件かな?と思っていたらムニュ〜と両頬を伸ばされた。


「にゃにしゅるんでしゅかっ」

「可愛い顔が可愛くなったよ」


野山さんは、プルプルと震えてるから絶対可愛くない!

もおっー!!と怒ろうとしたら後ろからグイッと引き寄せられる。


「!!」

「悟、何をしてる?」

「おっと。佳彦の登場だよ」

「佳…部長!」


部長に引き寄せられる私。


「華ちゃんと廊下で立ち話だよねー?」

「野山さんに頬を伸ばされましたけどね」


笑って言ったら野山さんは「まいった」って顔をして笑った。


「沢井さん、こっちへ」

「えっ?はっ?」


グイッと手を引っ張られて歩き出す。


「またねー。華ちゃん」


野山さんが手を振って私達を見送る。


「部長?何処に行くのですか?」

「華の好きな人はなのか?そうなのか?」

「えっ?何ですか?」


佳彦が、何かボソッと言ったけど聞こえなかった。

鍵の空いてる会議室に入り扉の鍵を閉められた。


「部長?なんですか?」

「華の…」

「私が何ですか?」


私の名前を言って言葉が詰まる佳彦。


「…私、支度がありますので失礼します」


鍵を開けようとしたら後ろから抱きしめられて

佳彦の匂いが私を包み込む。


「華は…野山が好き…なのか?」

「!?何で?」


どうしてそういう回路になるの?

私が好きなのは今も私を抱きしめてる佳彦なのに…。


「そういう佳彦だって…!」

「俺が何だよ」


『俺が何だよ?』って…?

佳彦の方を向き言ってやるんだから!


智子・・が、好きなくせに!!」

「……」


ほら、見なさいよ!黙ってさ。

図星突かれたから黙ってるんでしょ?


「…はぁ?どうして俺が上田さんを?」

「だって!さっき真っ赤になったじゃない!」

「……っ」


ほらっ!真っ赤になって…何よりの証拠よ!


「だから智子とお幸せに!それにもう別れたんだから」

「俺は納得してないぞ!」

「納得も何も私は離婚届・・・書いたんだからもうなのよ!」


…なんて淋しい響き。

好きなの。今も大好きよ、佳彦。


「あっー…もぉ、言い過ぎたらムカムカしてきた」

「食べ過ぎじゃないのか?」

「失礼ね!」


何事も無かったように言い合えるのは元夫婦・・・だからかしら。

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