2→最後も貴方と。(もしも企画2023春)

第2話

「私がもしだよ?もしの話だよ?」

「なんだよ」


ソファーに座ってTVを見ている旦那の隣に座って聞いてみてる。

結婚して10年、付き合ってから16年を迎える私達。高校時代からの付き合い。


「もしも、あの当時の告白を拒否していたらどうなっていたと思う?」

「拒否?有り得ない」

「はぁー…。分かりました。聞いた私が馬鹿でしたよ!」


ソファーから立ち上がって旦那の側を離れ、夕飯の支度をしようとキッチンに立つ。

ふと、思ってしまった。


「あの時、拒否していたらどうなっていたんだろうかー…」


今の旦那との付き合いは、中学からの同級生らしいけど私は全然知らなくって(向こうは私を知っていた)高校は偶然にも同じ所で(向こうが私の行く高校を調べ上げた)高校2年生の時に、


「友達から付き合って下さい!」


と言われて、そこは


「付き合って下さい!!」


って言うもんじゃない?と肩すかしを食らった。

なんだか、面白い男の人だなぁー…と思って、


「友達からお願いします」


と笑って応えてしまった。


「あれを拒否していたらどうなっていたんだろう…」


食材を切り刻みながらふとまた思ってしまった。

旦那がテレビを消してキッチンのテーブルに座って私に聞く。


「お前が拒否するのはないな。俺が拒否する」

「はぁっ?中学時代を私の事調べて高校の事も調べて、今で言うストーカーに言われたくない」

「なっ……!!」


真っ赤になった旦那の顔が好きですぐ分かる意思表示でストレートな言葉が突き刺さって好きになった。


「結局、お前は俺の告白を拒否するのか?」

「そうだね。あの時、拒否していたらどうなっていたかなー…と思ってる」

「なっ!?」


旦那の顔がビシッと固まった。


「あははは、面白いー」

「お前!俺を揶揄からかったなー!」


この人と付き合って結婚して良かったと思える

今(現在)で良かったと思った。



「んっ…」


ここは、何処だろうとキョロキョロして周りの

景色が懐かしく思える。

高校時代通っていた裏庭によく似ていた。


「んなっ!!」


自分の服装を見たら高校時代着ていた制服を着ていてビックリした。

私は今の今まで旦那の隣で寝ていたはずだった。


「川崎さん!」

立市たていち君?」


そうだ!ここは旦那に呼び出された場所だった事を思い出した。


「あの、俺と…俺と…」

「……」


言葉は知ってる。これ肩すかしを食らう言葉。

それで肩すかし食らわなかったらゲーセンの

パンチングマシーンゲームで発散しよう!と思った。


「川崎さん!俺と…俺と…」

「うん。何かな?」


“俺と”…ってもう4回言ってるよ?


「川さん!」

「んっ?」


川さんって誰かなー?

私、あの当時ドキドキしていてきっと聞いてなかったんだろうなーと懐かしかった。


「川崎さん!俺と…俺と!友達から付き合って下さい!」

「……」


やっと言ったよ、立市君。

“俺と…”って結局6回も言ってるからね?

ここは、「うん」って頷こう。


「友達からお願いします」

「本当に?」

「うん、本当よ?」

「マジで?マジのマジ?」

「うん。マジのマジでお願いします」

「ヤッター!!マジのマジのマジだー!!」


あっー…思い出したわ。

立市君とは初めてこの時に話して面白かったのを思い出した。


「川崎さん!“さん”は取って呼び捨てで大丈夫?」

「うん。いいよ」


そして、有言実行者だった。


「川崎!今日空いてるか?」

「?。空いてるよ」


そうだこの後、ゲーセンに遊びに行くんだった。

だから一回拒否してみようと悪戯心が発生してしまった。


「ゴメン!今日用事があるのを忘れていた」

「…そうなんだ。じゃあ、また今度…」


シュンと肩を落としてクルッと背を向けて哀愁あいしゅうただよわせる背中に胸が痛くなる。


「立市君!」

「“君”は要らないよ!何かな?川崎」

「いいよ。空いてるよ」

「ヤッター!!じゃあ、放課後!!」


なんだろう。ブンブンと尻尾が見えた気がした。

あー…そうか立市って「犬」に見えるんだと1人

納得した。


「川崎ー!!帰ろうぜー」

「〜〜っ」


そうだった!

立市は、私のいる教室に向かって大きい声で私の苗字を呼ぶからクラスの仲の良い友達に揶揄われた。


「あれ?弥生、立市と…?」

「違います!!断じて違う!」


友達にキッパリ断って鞄を持って教室を出る。


「立市、あの呼び方は勘弁して」

「川崎とやっと友達になったんだぞ!」

「やっと…?」


あー…そりゃあ、やっとよね…。中学時代調べて高校も調べれればね…と遠い目をした。


「何でもない!さぁ、行こうぜ!」

「うん。行こう」


2人で笑って案の定ゲーセンに向かった。


「わー!頑張れー!!立市っー」

「よぉーし!やってやるぞ!」


クレーンゲームにてアニメのキャラを取ろうとしてる立市に応援していた。


「あっ…残念!」

「あとちよっとだったのにね…」


ツメにひかかったけどガクンッと動いた拍子に落ちてしまった。


「でも、もう取ってもらってるよ?」

「あはっ。可愛い、川崎」


もう立市から取ってもらってる大好きなキャラのぬいぐるみで立市の肩をポンっと叩いた。




「川崎ー!!」

「は〜〜い。今行くよーん」


毎日って言うほど立市が私を呼びに来て呼び方はもう諦めた。

そして、私は立市とほぼ毎日放課後遊びに行き、マットに2人で行ったりテスト勉強の時は、図書館に行って勉強して…の充実した毎日を送っていた。



「………」


その日は当直だったので職員室に行き担任の先生の所に行ったらクラス分の課題教材を持って教室に向かう羽目になり、校舎と校舎の間の渡り廊下を歩いていたらその途中の外で立市を見かけたから声をかけようとした。


「立…」

「立市君!好きです」

「!!」


影で、女子生徒が見えずに危うく立市に声をかけそうになった。

そして、立市が告白されてる場面を目撃してしまった。

あの当時こんな場面なかったよ?


「!!」


私があの時、遊ぶのを一旦拒否したからあの当時なかった出来事が出て来てるの?


「俺は…」


ドキンドキン心臓が高鳴っていた。

立市が告白されていて手が震えている。


「聞きたくない!!」


後ろに下がったらジャリッと音を出してしまって

2人が私を見た。


「川崎!?」

「あっ、ごめんなさい」


慌ててその場を逃げ出した。


「立市君、返事を下さい」

「俺は……」


私は走りながら頭を振っていて体は震えていた。


「嫌っ!嫌っ!!立市が告白されてるなんて…」


廊下の少し凸してる所につまづいてバサバサッとみんなの課題教材が手の中から落ちてしまった。


「大変っ!!」


慌ててしゃがんで拾って私は気が付いた。


「立市が…好きなんだ…」


日々の楽しい事をいつも通りだと思っていた。

でも、立市は返事を「OK」するだろう。


「俺さ、彼方かなたさんが好きなんだよね…」

「えっ?そうなんだ…」


好きだと告げられたのは「私」でなく「彼方さん」の名前が出た事に心臓がチクッと痛かった。

そして、告白していた女子生徒は、間違いなく「彼方さん」本人だった。

その小さな傷はズキズキと広がっていき今は大きな傷になった。


「バカね、私…」


涙を拭いて課題教材を、全て拾って教室に向かった。

見なかった事に、あの時拒否しなければ「私」

だったかもしれない過去に戻りたいと願ったけど運命は残酷だった。



「ねぇー、弥生」

「んっ?何?」


教室で次の授業の支度をしていると仲の良い友人が聞きに来た。


「立市、彼方さんと付き合う事になったねー」

「…そうだね」


あの後、立市が私が学校から出てくるのを校門で待っていて報告しに来た。


「川崎、俺さ…」

「良かったね。彼方さんと付き合うのでしょ?」

「うん。俺、女心分からないからさ、教えてくれるか?」

「そうだねー。女心分かってないから教えてあげるよー」


笑っているけど心はズタズタに切り裂かれていた。

立市が好きだったのに自分の未来の旦那様を自分から手放してしまった。


「ふっ…くっ…」

「川崎!?」


立市が近寄るから手で阻止した。


「来ないで!早く去って!!」

「川崎っ……」


今醜い姿をしてる。

“好き”って気持ちがあるのに伝えられない気持ちは自分で消化しないといけない。


「じゃあ、川崎」

「うん。じゃあね、立市」


私の学生時代の恋は終わった。

立市の友達から恋人にはなれなかった。


「ふっ…うっ…」


私が選択したあの時の拒否した行動でこんなに変わるとは思わなかった。


「んっ…嫌な夢を見ちゃった…」


寝汗がひどくて目が覚めて布団を剥いだ。


「立市君か…懐かしいな。元気にしてるのかな?」


起き上がって懐かしさに浸る。


「確か…彼方さんと結婚したんだっけ?」


立ち上がってベットサイドにある引き出しを開けて写真付き葉書を見る。


「ふふっ。懐かしい」


“この春、結婚しました。

夫婦ともどもこれからもよろしくお願いします。

                 立市 竜男

              (旧姓・彼方) 五月”


2人の結婚姿の写真で今は、懐かしいと思える。

あの当時は胸が引き裂かれて立市と一緒に行った所をよく一人で回っていて自分を立て直していた。


「さぁ、切り替え!寝よう!」


私と立市は縁が無かった事と思って眠りについた。



《はい、その件はそれでお願いします。はい…》


26歳になっても彼氏を作らずに仕事一筋で働いていた。

就きたかった仕事に就けた。

この歳になって結婚は考えるけど“立市”以上の

男性に魅力がなかったのが本音だ。


《では、失礼します》


電話を切って鞄にしまい立ち止まっていたから歩き出そうとした。


「…川崎?」

「えっ?…立市?」


真正面から夢に出てきた男性が偶然にも街中で

会ってが止まった様に気がした。


「偶然だな。元気にしてるか?」

「うん、元気よ。立市は?」

「あっ、ああっ。俺も元気だよ」


お互い“元気・・の挨拶”だけで言葉が続かない。


「じゃあ、立市」

「また、会えるか?」

「えっ?」


また、が止まった。


「電話変わってないからlime頂戴。俺の分かる?」

「うん。まだ残ってると思う。…仕事終わり次第limeする」


立市と約束して別れた。

縁がまた再び繋がったのかと思ったけど奥さんがいる既婚者にlimeして良いのか分からなかった。


「ダメだよね。立市は、既婚者だもん」


仕事が終わり家に帰って履歴に残っていた立市のlimeを開いて文字を打とうとしたけど打てなかった。


「!!」


ピロンっと音が鳴り見たら立市からだった。


「立市にのめり込んじゃいけない。立市は既婚者」


あの時拒否してなかったら私達は今頃結婚してる?と思いながらグルグル頭の中が回る。


「……怖いけど、見る!」

{川崎、久しぶり。会えて嬉しかったよ}

「立市…」

{何処かで会えないかな?会いたい}


“会いたい”と思ってくれてるけど気持ち悪いのもあるかも。

そして、懐かしいのはあるけど、グイグイ来られると気持ち悪い。


「女心、未だに分かってないな…」

{川崎?}


返信がない私に痺れを切らしたのか打ってくる

立市。


「はぁー…。少しキツく言った方がよいね」


立市に怒りlimeをする。


{そういう事(会いたい)は言わないし、打たない!!勘違いする!立市は、既婚者でしょ!}


既婚者なんだから、もおー…と溜息が出ちゃった。


{あれっ?言ってなかった?離婚したよ}

「はあっ?」


いつ離婚したよ!!いつ離婚したよ!!って2度も思っちゃったよっ!


{…明日なら大丈夫}

{じゃあ、明日、会った所で10時に!}

{…了解}


離婚してるなら会っても良いか…と自分に言い聞かせる。


「明日の10時に会った所ね…」


急いで自分のクローゼットから服を繕う。

別に会いたいと、話したいたら思ってるだけで

あって別にね…と自分で自分にツッコミ入れていた。



「待った?」

「待てないよ。川崎ならいつでも待たれる」

「えっ?」


立市と久しぶりに会った場所でそれも街中で急にそんな事言われてどうしたら良い?

言葉に困る。


「川崎、今までごめん。俺ちゃんと見てなかった」

「立市?」


立市が頭を私に下げる。人通りが多い街中でジロジロ歩行者の人達は見ていく。


「俺と…俺と…」

「……」


立市…こんな街中で何を言われるか私は分かってる?

そして、この光景は見覚えがある!!


「立市っ!ここ街中で人通りが多いから!

ねっ!」


立市の手を無意識に繋いで人通りから公園に向かう。


「ここなら平気でしょ?」


平日の公園でも子連れの家族が楽しそうにしている。


「ふふっ。可愛い」

「川崎!」

「あっ、ごめん。見入っちゃった。そして。ゴメン、手を繋い…」


手を離そうとしたら再度握られ立市の方を向く。

ベンチの前で私達は2人で立って向き合ってる。


「俺と…俺と…」

「うん…」


高校時代のあの頃が蘇る。


「俺と…俺と」


また“俺と…”が4回目だから今度は6回目になるの?

そんなのもう待てないな。


「立市、好きです。私と付き合ってくれますか?」

「……!!」


背伸びをして顔が真っ赤になってる立市の頬に

キスをする。

ビックリして立市が座ったから私も座る。


「!!」

「立市、ずっと高校から好きだった。そして、

今も好きよ」

「あっーー…。先に言われたー」


ベンチの背もたれに寄りかかって上半身を反らせる。


「なら俺は!!」


ガバッと起き上がって、私の両手を握り真剣な

眼差しをする立市。


「川崎弥生さん」

「はい」


ドキンドキンと心臓が高鳴ってる。


「俺と…バツがついてる俺だけど結婚してくれますか?」

「……あはは」


笑ってしまった。


「俺、おかしい事言った??川崎っ」

「川崎じゃないでしょ?あははっ」


幸せで幸せすぎて嬉しくて笑ってしまった。

そう、川崎・・じゃなくなる。


「弥生って呼んで?竜男?」

「〜〜っ」


再び真っ赤になる立市に抱きついて耳元で囁くように伝える。


「はい。よろしくお願いします」

「…弥生!!愛してる!」

「私もよ」


2人で抱きしめあった。

そして、立市の離婚理由は、彼方さん(旧姓)が、

浮気をしたらしく、


「なんだか自分が思っていた結婚生活じゃない」


…が理由らしい。




「弥生、朝だよ。起きて」

「んっ…」


誰かの声で起こされる。


「竜男?おはよう…どうかした?」

「いい夢見てた?俺の名前しきりに呼んでた」

「……ふふっ。内緒」


あの後、両方の両親に結婚の承諾をもらって同棲してから改めて結婚して夫婦になった。


キッチンに行って朝食が出来ていてビックリした。


「どうしたの?これ」

「えっ?別に昨日の事が原因じゃないからな!

そして子供達は学校に行ったよ。もう」

「子供達の事はありがとう。…昨日の事?」


一瞬何の事を言ってるか分からなかった。


「俺の事、拒否させないからな!一生」

「えっ?えっ?」


あれは昨日の事で私の夢だったの?

何処からが夢で何処からが現実なの?と少し

パニクっていた。


「弥生?大丈夫か?」

「あっ、うん。平気よ?」


竜男が私を腕の中に入れて抱きしめるから抱きしめ返す。


「私は何処に向かっても貴方に会える」

「?」


あの時、一瞬でも拒否してゴメンね。

でも、どの道を通っても私は貴方に会うし、貴方を見つける。


もし、貴方に会ってなかったらって考えたら赤ちゃん時代かもしれないけど。

そしたら、赤ちゃんの時も同じ病院の同じ部屋が最近になって判明した。



もし、違う出会いをしても必ず貴方を見つけ出すから、待っていてね。

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