第2話 北風と太陽?

 むかしむかし、空の上に北風と太陽がありました。この2者は仲が悪く、何かと言うと角突き合っておりました。


 ある日、太陽が北風に言いました。


「俺らのどっちが強いか、決着を付けようぜ。」


 そして、地上を歩く一人の人間を指し示します。太陽が提案したのは、人間が着ている外套を脱がせた方を勝ちとし、負けた方は今後一切勝者に逆らわないこととする、というゲームでした。


 北風は陰気な目つきを太陽に向けました。


「冗談じゃない。こちとら、そんな出来レースに乗るほどアホじゃない。」

「どういうことだ。」

「風が吹いたくらいで衣服が脱げるなら人間はいつも真っ裸だが、そんな人間はいない。一方で、暑ければ自然に服を脱ぐ。どう考えたって、お前が勝つためのゲームだろ。」


 下心を見透かされた太陽は、ぷんぷんと怒りました。


「負けるのが怖いから言い訳をするんだろう。逃げるだなんて卑怯だ。」

「卑怯はお前だ。勝負したいなら、正々堂々、こいつでやってみろ。」


 北風はそう言うと、将棋盤を取り出しました。太陽は顔を輝かせてうんと頷きました。


「良いだろう。将棋は得意だ。」

「よしきた、では早速」

「いや待て、そちらは飛車角落ちで頼む。」

「将棋が得意だって言ったのはどの口だ。」


 ブツブツ言いながらも、北風は大きなハンデを付けてやります。


 何にせよ、お互いに駒を並べて、北風と太陽の勝負が始まりました。両者とも長考を繰り返し、駒はなかなか動きません。その上、すぐに


「待った」


が双方から出てきます。これではいつまで経っても勝負の付くはずがありません。


 こうして、長いこと北風と太陽が同じ空に留まることになりました。これが、上州名物のからっ風の正体なのです。とっぴんぱらりのぷう。

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