85・「それ」は秘密に…

第85話

「…ハイア」

「ティス、気が付いた!?今リン王子を…」


目が覚めたティスは、視界に入ったハイアを、

呼び“その声”に気付いてティスの元に駆け寄る。


「…呼ばないで。忙しいでしょ?」

「でも…!目が覚めるのを待っているのよ?」

「うん。それでも呼ばないで」

「…分かったわ」


本当はリンに教えたかったけどそれをティスが、拒否した。



「…テリーは元気してる?」

「元気してるわ」

「そう…ゴホっ…」

「ティス!」


前を向いていたが横を向いたら急に咳が出てハイアが布を渡してティスは“それ”に咳を出し、

ハイアはティスの背中をさする。


「!!」

「ティス!それっ…」

「…リン様には絶対言わないで!絶対」


咳が収まってハイアに布を渡そうとして

見たら“血”が付いていて血も一緒に吐いていた。


「大丈夫だから。リン様には…」

「大丈夫じゃないわ!ティス!」


そんなに余命は長くないと感じたティスは、最後まで秘密にしようと思った。


「私は、これは処分するからね!リン王子を呼んでくるわ」

「うん。分かったわ」


少し動いただけなのに息が切れる。


「ティス!!」

「リン様…」


走ってリンがティスの所に来てティスの頬を触り、ティスの名を呼ぶ。


「ティス!俺の王妃。侍医!薬湯を!」

「はい!王妃様」


リンはベットサイドに座りティスをゆっくりと起こして自分リンに寄りかからせて薬湯を飲ませる。


「リン様、大丈夫ですから」

「いいから、甘えてろ!甘やかす権利を取るな」

「…はい」


リンの胸の中で薬湯をゆっくり飲み干すティスは、リンが顔には出さないけど体が震えていた。


(リンに心配かけてしまった。これ以上心配はかけられない)


そう思ったから“血を吐いた”事は絶対言わない事にした。


「リン様、大丈夫ですから」

「俺はティスの大丈夫・・・は信用しない。ヤリー、ここで書類をするから仕度しろ」

「仰せのままに」

「リン様!?政務室でやるのがすじです」

「ティス、これ以上、俺を殺す気か?」


そんな事を言い合っていたらヤリーがテキパキと書類を整えてしまった。


「ティス、ここにいるから眠れ」

「はい。ありがとう」


リンは、ヤリーに仕度してもらったテーブルに座り書類を仕上げて行きそれをベットで横になりながら見るティス。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る