82・ティスの経歴はね…

第82話

「カルティロス様、失礼を承知でお聞きします」

「何かな?


リンは、ティス以外の女性の名前を呼びたくないから全て“”呼び。


「王妃様の身分は何でしょうか?」

「王妃?ティスか?」

「コラっ…!何て事を聞いているんだ!兄上の王妃様だぞ!」


リンに言われて頷くヒナダリ。


「男爵令嬢だ。それは、王も王妃も知ってる。

隣国と結婚同盟・・・・してるから家柄は関係ない」

「そうなのですか。ありがとうございます」

「兄上!申し訳ありません!言って聞かせます」


ナニは、リンに頭を下げたがリンは気にしてなかった。


「別に王妃が男爵だろうと公爵だろうと“愛してる”から身分・・は関係ない。嬢、口の聞き方に気をつけろ」

「はい。申し訳ございませんでした」


ヒナダリは、頭を下げてリンは書類をナニに渡して政務室を去った。


「コラ、何を聞いているんだ!兄上の王妃だぞ?」

「聞いて見たかったのです。公爵令嬢なら身分が合うと思ったのです!でも、男爵なんて…」

「兄上の結婚は隣国のコウラサンとの上に成り立ってる結婚なんだ!」

「えっ?なら王妃様は隣国コウラサンの人間?」

「そうだ。隣国コウラサンクッシナン王子の婚約者がココのナウロスタニの婚約者で、王妃ティスも隣国の人間だ!」

「ナニ王子様!申し訳ございませんでした」

「当たり前だ!王妃教育で何を習ってる!」


ヒナダリは、真っ青になった。

隣国同士、交流を深める為にそれぞれ娘を差し出す。それを拒否したら戦争に勃発しかねない。


王妃ティス様が隣国コウラサンの人間なんて…」

「兄上の王妃だ。自国ナウロスタニの人間な訳ないだろ」

「はい。申し訳ありませんでした」


再び謝った。

自身ヒナダリの出生からもうティスに勝てる訳がなかった。


(カルティロス王子様が王妃に迎えた理由が分かったわ…)

「コラ、まだ終わってない。手伝ってくれ」

「…はい」


ナニは、再び報告書に向かいコラに呼びかけた。


(でも、好きでいるのは構いませんよね?)


好きでいる事はやめるつもりはなかったヒナダリだった。




「ナニの婚約者・・・に何か言われたか?」

「えっ?ヒナダリ様からですか?」


寝室で体を休めていた時にリンからそう聞かれた。


「いいえ。“楽しいお茶会”はしましたわ」

「そうか。“楽しいね”…」

「はい」


リンが聞いてきたからそう答えた。

事を荒立てるつもりも更々さらさらないティスだった。

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