75・過保護になりましたよ

第75話

「ここは…何処?」


真っ白な景色に一人立っているティス。

周りに誰も居ない。


「あー」

「!!」


小さい声で赤ん坊が泣いていて振り向いたらそこに居た。


「赤ちゃん?“あの時”の…」


ティスは、その赤ん坊に駆け寄ろうとしたら

後ろから大きな声で泣く赤ん坊の声が聞こえる。


「ああーん、あーん」

「…テリー?泣いてるの?」


ティスは、テリーの声を頼りに白い景色を走り出す。

ただ一心にテリーを抱きしめる為に。


「ごめんね、私の赤ちゃん。ごめんね」

「ああーん、あーんあーん」


泣いてるテリーを見つけて手を伸ばすと誰かに手を掴まれた。


「ティス!」

「……」


フッと目を開けたら涙が流れていて視界にリンが映る。


「リン…?私…。赤ちゃんを…」

「ティス!!」


リンはティスの手を握っていて涙が溢れていた。


「リン様…テリーは元気してますか?」

「大泣きだぞ。ほらっ、今も…」

「ああーん、あーん」

「本当ですね。泣いてる。私の可愛い子が…」


テリーに手を伸ばすとハイアがテリーを連れて来てくれてティスは、テリーを触る。

久しぶりにテリーを触った気がした。


「久しぶりにテリーに触ったわ…」

「…1週間昏睡状態で生死の境を彷徨っていたんだ」

「リン様…ごめんなさい」

「お前を失ったら俺は生きていけない。ティス」

「おかえりなさい、ティス」

「…ただいま。ハイア」


お互い挨拶をして笑った。

その後のティスは見る見る内に回復していって

ベットから出れるまでになった。


「やっとベットから出れたわ」

「まだ油断禁物よ?はい、薬湯」

「ありがとう」


ハイアから薬湯を貰って飲み干した。

薬湯を飲んでいるからテリーに母乳をあげれず

心が痛むけどリンに「自分ティスの体が大事だ!」と言われている。


「元気になったらテリーも抱っこ出来るわね」

「そうよ!元気にならなくちゃ」


ハイアに励まされて窓辺に向かって歩き出す。


「ランティス様、無理はせずに」

「ありがとう。でも、体力が落ちてるからね」


ちょっと歩くだけでも苦しくなるから少しずつ

歩く距離を伸ばす。


「ティス!無理は禁物だと言っただろ!」

「きゃあ!リン様」


後ろからティスを抱き上げるリン。


「大丈夫です。少しくらい」

「ダメだ!」


過保護になったリンだった。

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