74・容体が…

第74話

産後の経過もよく侍医に「少しなら散歩は大丈夫」と許可を貰ってリンにも許可をもぎ取って

テリーと庭に出た。


「気持ちいいねー。テリー」

「そうだな。家族三人・・・・で庭散策もいいな」

「…リン様…」


何故か二人テリーとティスだけだった筈なのに、リンも庭散策してる。


「リン様、仕事残ってるのでしょう」

「もう残ってないよ。全部終わらせて来た」

「……」


疑っちゃいけないのに疑う目をしたティスにリンは視線を逸らした。


あるじ!ここに居るの分かっております!まだ山積みですよ」

「ヤリー、家族団欒邪魔するなんて鬼だな?」

「アンタが終わらせてくれないとコッチも終わらないですよ」

「…ティス、テリー、パパはもう行くよ」

「あっー…はいはい。行ってらしゃい」


ティスは、呆れて声をかけ、リンはティスとテリーにそれぞれに頬にキスをしてヤリーに連れて行かれた。


「テリー、パパは、駄目ですねー」

「本当ね。リン王子は、子煩悩ね」

「“堕ろせ”って言われると思ったから黙っていたのに逆に愛されちゃってるわね」

「当たり前よ。リン王子は、ティスしか見てないんだから」


ハイアに言われて恥ずかしくなった。

リンが自分ティスを求めてくれる事に嬉しくなりテリーをもっと優しく抱きしめる。


「ねぇ、ハイア。私、幸せだわ」

「私も、ティスとテリーの側に居れて嬉しいわ」


ハイアと笑い合った。

庭の花達は風にそよそよ揺れていた。



「侍医!早く治せ!」

「ランティス様!聞こえますか?」



朝、いつも通りの朝だと思っていたハイア。

部屋に入ったらテリーが泣いていて不思議に思ったハイアは、急いでティスの所に行ったら息がまばらで慌てて侍医を呼ぶ。


「ランティス様、薬湯でございます!飲めますか?」

「俺が飲ませる!」


侍医が持っていた薬湯を取り自分の口に入れて

ベットで寝ているティスに薬湯を口移しして飲ませる。


「ティス!俺が分かるか?」

「うん…分かる…」


そう言ってまた気を失ってしまった。


「ティス!侍医、ティスを治せ!」

「はっ!カルティロス王子様。仰せのままに」


リンは側に居たかったけど、仕事が残ってるから部屋を出て行った。


「ティス、俺の愛おしい妻」


こぶしを握りしめて政務室に向かった。

自分の気持ちを殺して王子・・としての仕事をこなす為に歩く。

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