69・脱出…失敗ですよ…

第69話

リンから家族全員がこの世から居なくなったと

聞いてベットに入っても中々眠れなかったティス。


「…眠れないのか?」

「あっ、ごめんなさい。起こしちゃった?」

「いいや。起きてた」


ティスの隣に居てリンは横を向いてティスのお腹を撫でる。


「信じられないって顔だな」

「うん。この目で見てないからだと思うし、実感が湧かない…」


ラリーネと義母に虐められていて父は無関心だった事が嘘の様に感じていた。


「父が本当に…二人を?」

「あぁ。モウからの報告だから間違いない」


自国コウラサン王子クッシナンの報告なら間違いないと思った。


「リン様、私は悪い女です…」


リンが黙って聞いていくからティスは続ける。


「“赤ちゃんを堕ろせ”と言われなくなって嬉しいのとこの世から消えて寂しい気持ち半々なんです…」

「当たり前の気持ちだ。お前は何も悪くない」

「リン様、約束して下さい」

「出来ない約束はしない!お前を失うなら俺は

王位なんて要らないからな!」

「リン様!それでっ…」


グイッと顎を掴まれてキスを交わす。


「んっ…リン…」

「ティス、お前は俺のモノだ。誰にも渡さない。俺とティスの赤ちゃんだ!」

「リン様っ…」


二人ともそれ以上は喋らなかった。

抱きしめて眠りについた。



「ハイア!お願いがあるの!」

「OK!脱出でしょ?」

「えっ?ええ!」


朝になりハイアが来たから言ったら即ティスの

言いたい事が分かったハイア。


「このカスロイルに当て馬になって貰おうと計画を練っていたのよ〜」

「んっ?今…」

「ん?だからこのにね」


カスロイル様が“ココに来たい”と言ったのは“ハイア”が計画したって事だと思った。


「よしっ!家は確保してあるから後は脱出するだけよ!」

「ありがとう。ハイア」

「良いって事よー」


ティスは、フードを被り顔が見えない様にして

ハイアはそのままの姿で扉を開けた。


「……」


左右首を振って誰も居ない事を確認してハイアが先に出てティスも出る。


「なんだか不気味ね。まるで分かってるような」

「まさーか」

「分かってますよ?ハイア?ランティス様?」

「「!?」」


後ろから聞き覚えのある声。


「ヤリー様…」

「ヤリー。リン王子に命じられたわね!」


ヤリーが腕を組んで立っていた。

逃げ道がないとはこの事だと思った二人ハイアとティスだった。

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