65・言い合いっこ??

第65話

「!!」


慌てて飛び起きた行動が最近こんな多いなぁと思ったティスは、辺りを見回して窓を見たら真っ暗だった。


「あらっ。私いつの間にか寝てた。そして、布団が掛けられてる?」


自分が寝転がった時は布団をかけてなかったのに掛けられてフワッと知ってる匂いが鼻腔をくすぐる。


「リン様…忙しいはずなのにわざわざ来たの?」


怒ろうと思ったティスなのに怒れなくなってしまったその時に扉がノックされて返事をした。


「あっ、はい。どうぞ」

「寵姫様、失礼します。起きられたようなので夕飯をお持ちしました」

「ありがとう…ございます」


夕飯が運ばれて来て匂いが纏わりつくけど気にならなくなった。


「何かご不便はございませんか?」

「ないです」

「左様ですか。何なりとお申し付け下さいませ」


侍女らしき人はそう言って壁側に寄った。


(食べづらい…)


人が壁側に立っている場所でご飯を食べるのに

慣れてないティスにとっては拷問だった。


「ねぇ、貴女は食べないの?」

「はい。私は大丈夫です」

「そう…。ところでこのもう一人分は誰の?」

「はい。こちらは…」

「ティス!起きたかい?」


扉が勢いよく開いてリンが笑顔で現れたから

ポロッとスプーンから食材が落ちた。


「リン様!」


リンは、手を振ると侍女がソレを見て下がり二人きりになる。


「ティス、体調は大丈夫かい?」

「はい。眠りましたので大丈夫です…」


リンの顔を見て怒りが沸々ふつふつと込み上げて来た。


「リン様!」

「怒ると赤ちゃんに悪いよ?」

「怒りたくなります!寵姫・・部屋・・って何なんですか!」

「俺の愛おしい姫君の部屋」

「いやいやッ…おかしいですからね!私の荷物を

勝手に運んで!」

「赤ちゃんが産まれるでしょ?万全の体制を整えておかないと!」

「リン様には全く関係ありません!!私の赤ちゃんです」

「父親は、俺だよね?」

「違い……ます?」


“違う”とも言えずに、どもった。

父親は、『リン』なのだから。


「へぇー…違うなら誰の子?その男をやはり処刑しようか」

「リン様!赤ちゃんになんて悪い事を言ってるんですか!」

「言ったのはティスだよ?俺はソレに対してどうしようかって言ったんだよ?」


ぐうのも出ずにリンが笑って「さぁ、食べよう」と言うから黙って食べた。

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