60・他人行儀に

第60話

「イタタ…」


足がお腹がって、起きたティス。


「元気な赤ちゃんね」


お腹を撫でるとポコッと動く。


「もう、分かるのかしら?」


ポコッと反応する時としない時もあるから

気分次第なのか…と思った。


「そろそろ支度しなくちゃ」


立ち上がるのも少し大変になってきて、リンに

ヤリーにいつまで騙せるか分からなくなって来た。



「ランティス、王子のお皿だ。最後だからな」

「はい。サファさん」


仕事にはちゃんと来た。


(最後まで…ギリギリまでするって決めたんだもん)


お皿を見たら完食していて安堵した。


「そう言えば、ランティス」

「はい。サファさん」


サファに名前を呼ばれて難しい顔をしたから何かしてしまったのかと思ってしまった。


「ランティス、王子の従者からの伝言があってな」

「はい…」


王子命令だから逃げれない命令だと思って黙って聞く。


「今日の昼、皿を片付けに来てくれとの事だ」

「分かりました。その間は抜けますので」

「王子命令だ。仕方ない」


再び皿を洗いに入る。

少しばかりお腹が膨らんで来て腰が痛くなるけど弱音を吐いてらんないと思った。

仕事をしていたらお昼の時間になり、そろそろ

食べ終わる頃だと時計を見る。


「ランティス、そろそろいいぞ」

「はい。行ってきます」


足が足枷を付いた様に重かった。

行きたくない気持ちが出てるんだろう。


「お待ちしておりました。ランティス嬢」

「ヤリー様。命令なんて酷いですわ」

「昨日断れたので慰めて下さいね。リン王子を」

「えっ?嫌です。私はお皿を、片付けに来ただけですから」


ヤリーが扉を開いてティスは、唾を飲み込んで足を入れた。


「カルティロス王子、お皿を片付けに来ました」

「どうぞ?」


ワゴンを引っ張って来たからその上に食器を乗せて行く。


「何で昨日は断った?」

「会う必要が無いと思ったからです」


お皿をワゴンに乗せながらリンの目を見ずに言っていく。


「ティス、俺の目を見ないのは何故だ?」

「不敬ですが見る必要は無いと思ってます」


見たら…一瞬でも見たら自分の気持ちが溢れてしまうと思ってリンの方を見ないティス。


「ティス、会いたかった俺の気持ちは置いてけぼりにするのか?」


寂しそうな声が聞こえて来たけどティスは無視すると決め込んだ。

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