59・ヤリー様と久しぶりに対面

第59話

《ルビを入力…》ティスは、早歩きで王城を抜け出ようとしていた。


(リン様にあんなに間近にお見えして…喋って…)


嬉しかったし、悲しくって気持ちがぐちゃぐちゃになっていたティス。


「ランティス嬢、お久しぶりです」

「!!ヤリー様」


早足で抜け出していたのにヤリーに会ってしまった。


「リン様から言付かっておりますのでこちらに」

「いいえ。会いません。申し訳ございませんがお断りします」


リンに会っては行けないのに、会ってしまった。

会ったら喋りたくなり触れたくなりそれ以上を求めてしまう。


「ヤリー様、リン様に私の事は忘れて下さいと伝えて下さい」

「ランティス嬢!!」


ヤリーに頭を下げてティスは、その場を走って去った。


「王城にいたら会う確率は高いかもしれないけど下働きだもん。会わないわ。うん」


そう思って明日に備える事にした。

歩きながら涙を流していた自分に気付いたのは家に帰って来てからだった。


「ごめんね。パパに会わせてあげれなくて」


お腹を撫でると少しポコッと叩いた気がした。


「パパに会いたいのね?でも、会えないのよ」


赤ちゃんに謝っていくティス。

別の意味で涙が流れていくけど無理に止めようとせず涙を流していた。




「ハイア、あのね…」

「聞いてるわ。リン王子に会ったのでしょ?」

「…うん。ゴメン!私が甘かったわ」

「なんでハイアが謝るの?」

「だって、下女だから会わないと思ったのに!」


ハイアは、ティスの“リンに会いたくない”気持ちに寄り添ってくれていてアレコレしてるかど結局の所、リンが上手うわてだと証明してしまった。


「そう言えば料理長が、言っていたけど

リン王子、久しぶりに夕食を完食・・したって言っていた」

「そうなの!?気になっていたから良かったわ」


ご飯を食べてなかった頃に比べれば完食・・なんて凄い事だ。


「誰かさんの影響じゃないかしら?」

「えっ?」

「誰かさんが居なくなった後、食が喉を通らなかったし、見かけて食が戻るなんてね〜」


ハイアがニヤニヤしながら言ったからティスは、否定した。


「そんな訳ないわよ!たまたまよ!たまたま」

「そうかしら〜」


ハイアがそう言ったから“そうか?”と思ったけど“絶対違う!”と思う事にしたティスで二人は

心ゆくまでお喋りをしていた。

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