55・働きたいので…

第55話

「…気がついた?ティス!」


目を開けたら見知らぬ部屋で寝ていてハイアが

心配な顔をして覗き込んでいる。


「私…?」

「気を失ったのよ!赤ちゃんは無事だから」

「ありがとう…」


お腹を撫で安心してから慌てて起き上がった。


「ってハイア!ゴメンなさい!私寝て…あっ」

「ダメよ!急に起き上がっちゃ!」


ハイアが慌てて支えてくれた。


「赤ちゃんが育って来てるから貧血も多くなるんだって。産まれるまでココに居てもらうわ」

「そんな事…!!」

「ダーメ!ティス、体力つけましょ」


ハイアは、手を叩いたら侍女達がご飯を運んで来た。


「食べれる様に匂いの少ないのにしたわ。どう?食べれる?」

「ハイア、何から何までありがとう」

「いいのよ!気にしないで」


ハイアと見合って笑ってご飯を召し上がる。

温かくて美味しいご飯。


「ハイア、貴女は、ここの女主人なの?」

「ここ?ここは私の別荘みたいなものよ」

「そうなの」


別荘・・って聞いてハイアが公爵令嬢か侯爵令嬢どっちかだと思ったティス。


「ここには、ヤリーしか来ないわ。リン王子は知らないから大丈夫だから」

「うん。ありがとう」


食が進まない。原因は分かってる。


「ハイア…あのね、リン様なんだけど…」

「リン王子の事?」

「うん。…婚約者の方と帰って来たってあの時、聞いたの…」


ハイアなら何か知ってるかもしれないから聞いて見たらハイアの顔がビックリした顔をしていた。


「婚約者?リン王子が?あり得ない。帰って来たのは帰って来たけど…」

「えっ?違うの?婚約者候補の一人である

カスロイル・アン・ウィンア様が…」

「あぁ、あの人?まぁ、リン王子が好きって言ったら好きだけどリンは他人行儀・・・・ね」

「そうなんだ」


でも、ハイアから聞いた言葉。

信じられると言えば信じるしかない。


「ハイア、お腹空いちゃったわ。食べましょ」

「そうね!食べましょ」


二人とも楽しい団欒だんらんになった。


「ハイア、働ける所ないかしら?」

「そうね…。あっ!城の下働きなら募集していた!皿洗い?」

「そこならお腹大きくなるまで働けるかしら?」

「短時間だから大丈夫よ!それより平気なの?」

「平気よ、働きたいの」


ティスの熱情に負けたハイア。

そして無事合格して下働きの皿洗いに働きに出る事になった。

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