51・少しは気が晴れた

第51話

「ゴミだから捨ててね。ランティス?」

「…はい。…畏まりました…」


床に座り込んで頭を床に付けて義母に従った。

リンから貰った服の上で静かに泣いていた。


「お義母〜カルティロス王子様から頂いたドレス着てみたいわ」

「そうね。ランティス!」

「…はい」


今だに頭を床につけたままだった。


ラリーネのドレス着替えるのを手伝いなさい。アンタは能無しなんだから」

「はい。コレを片付けて来てから行きます」


ティスは、ズタズタになった服を持って自室に

向かう途中も涙が溢れ出て止まらなかった。


「リン様、ごめんなさい。なんて謝れば良いか分からない」


ズタズタに切り裂かれた服を自室に置いて姉の

部屋に向かった。扉を開けたら丁度ドレスを着ている最中であった。


「なんて美しいの」

「お義母様!カルティロス王子様を連想させる

色合いね」


このラリーネと義母はリンを詳しく見てないから連想させる色合いと思ってるが

ティスから見たら姉の婚約者のマリーサを連想させる色合いだった。


(マリーサ様を連想させるって口が裂けても言えないわね)


黙って手伝っていた。

悲しくても涙を止めないと叩かれる事は分かっていた。


「さぁ、出来たわよ!ラリーネ!本当に綺麗」

「綺麗ね。カルティロス王子様に御礼を言わなくては」


一周回ってドレスの前後を見る姉。


「お嬢様、奥様、お客様でございます」

「お客様?誰かしら?」


メイドがノックをして扉の向こうから言って義母は「通して頂戴」と言った。


「ラリーネ!着てくれたんだね!」

「マリーサ?どうしてココに?」


訪問者は姉の婚約者のマリーサだった。


「急遽カルティロス王子に呼ばれてね。僕の好きな色合いを知りたいと言ってね」

「えっ?」


ラリーネの顔も義母の顔も真っ青になっていく。


「僕の婚約者のラリーネ、綺麗だよ。それを着て舞踏会に行こうね」

「えっ、ええっ。お義母様、早く脱ぎたいわ」

「そうね。早く脱がないと汚れてしまうわね」


リンから贈られたドレスじゃないと知って早く

脱ごうとしたらマリーサが止めた。


「何で?綺麗なラリーネとお茶をしたい」

「えっ?ええ。そうね。マリーサ」


引き攣った顔を姉がしてるのを見てリンから贈られたドレスを直接手は出してない姉だが少しだけ

気が晴れたティスだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る