44・一旦、家に帰ります

第44話

「リン様に外出許可を頂きたいです」

「俺が出すと思ってるのか?」

「はい。姉と義母が迎えに来ておりますので一緒に帰りたいと思ってます」

「俺も行くと言った筈だ!」


前回そう言ったがこれはヒョウ家の問題。


「リン様に家の事は関係ありません。それに

大丈夫です。リン様」

「ティス、濡れているのは何故だ?」

「これは…私が…」


リンが溜息をついたら何処ともなくヤリーが現れた。


「リン様、まだ仕事残ってますよ?」

「…そうですよ!早く仕事に戻って下さい」

「ティス、帰って来たら聞くぞ!」


ティスは、お辞儀をして執務室を出た。


「ランティス嬢、本当に平気ですか?」

「ヤリー様、平気です。家に帰るだけですから」


笑って言ってヤリーに頭を下げて自分の部屋に

行った。



「…早く着替えないと」


お腹が心なしか少し大きい気がして触ったけど

まだ反応はない。


「気持ち悪いのもあるけど大丈夫。この子を守る為だもん」


お腹をさすって語りかけ着替える。


「よし、2.3日分位で大丈夫よね?」


2.3日で帰ってくると思っていて荷物をそんなに

持って行かなかった。


「ラリーネ様、お義母様、お待たせしました」

「遅いわよ!ランティス」

「ランティス、親孝行して頂戴ね?」


義母とラリーネの威圧的な言葉に心が折れそうになった。


「ランティス、見送りに来たぞ」

「!!」

「カルティロス様!会いに来て下さったの?」

「カルティロス様、我がラリーネに会いに来て下さってありがとうございます」


この2人はカルティロスが王子だと言う事を何一つ分かってなく無礼にも程がある。

それを見てティスは、リンに頭を下げていた。


「ティス、手紙を書け。すぐ迎えに行くから」

「はい。ありがとうございます」


リンは、2姉と義母をとことん無視してティスに話しかける。


「カルティロス様、またお会いするのを楽しみにしてますわ」

「そうです。我がラリーネをカルティロス様のお側に」

「ティス!」

「ハイア!来てくれたの?」


ハイアが息を切らして来てくれたから嬉しがって抱きしめた。


「当たり前よ!ティス!すぐ帰って来てね」

「えぇ。お父様の容体を見たらすぐ帰るわ」


ハイアは、ティスの耳元で“赤ちゃんバレない様に”…とコソッと言って頷くティス。


「行って来ます」


笑顔で自分の家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る