42・言いたいのにね…

第42話

「あのね、家から手紙が来て」

「断る。お前は家に帰らせない」


手紙の内容を見てないのにリンは拒否して再び抱きしめる。


「お前はあの家に帰りたいと思うのか?」

「帰りたくないわ。でも、お父様が倒れたって」

「早馬を動かす!本当かどうか見極めてやる。

それでも行くなら俺も行く」

「リン様!落ちぶれ男爵令嬢の所に行くなんて!」

「落ちぶれだろうとお前は綺麗なんだ。もっと

自信を持て」

「リン…様」


お互いの唇を合わせようとあと数cmの所、ノックされた。


「あっ?誰だ」

「リン王子、お時間です」

「ヤリー…」


いつもの事でティスは、久しぶりに心から笑いが出たような気がして、リンはヤリーが見てるのにティスの頬にキスをした。


「リン様っ!!」

「その笑顔は反則。でも、これで執務が捗る」

「それは良かったです。では、お願いしますね」


ヤリーはドサッとテーブルに書類を置いた。


「ヤリーは鬼だな。鬼の中の鬼だ」

「私が鬼ならリン王子は鬼の王様ですね」

「………」


2人の会話が面白く笑っていたらハイアが不思議な顔をして来たから説明したら大爆笑した。

その日、リンの執務室から笑い声が響いていた。



「ハイア、狭くない?大丈夫?」

「大丈夫よ!まだ小さいんだから」

「そうよね」


ハイアと同じベットに入ってるティスはハイアが狭くないか聞いていた。


「そろそろ寂しいんじゃないの?」

「そんな事無いわよ!今、カスロイル嬢様が来ているから丁度良かったと思ってるわ」

「そうね」

「だから良かったと思ってる。それよりゴメンネ」

「何が?」

「ヤリー様との密会…邪魔して…」

「良いのよ!!私とヤリーは長い付き合いだから」


慌てるハイアは可愛いと思ったティスは笑う。


「ハイア、お休みなさい」

「うん。お休み、ティス」


2人とも目を瞑って夢の中に入る。


「んっ…リン様…」


夢の中が異様に怖くリンを呼ぶティス。

手を伸ばせばいつも握ってくれるリンの手とリンの顔が目を開ければ映る。


「……」


目を開けても天井が映るだけでリンの顔が見れなかった。

静かに涙を流していた。


「ママは、リン様に言いたいよ…」


ボソッと呟いたのが暗闇の中に消えて行った。


「……」


目を開けて聞いていたハイア。

心が苦しくなった。

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