38・嬉しいのと嬉しくないのと…

第38話

「外が騒がしいわね」

「あらっ、ティス。とうとう来たのよ!」


ハイアが窓拭きをしていたティスに言う。


「カスロイル・アン・ウィンア伯爵令嬢が来たわよ!」

「えっ?」


窓を見たら豪華な場所が門の所に止まり中から

遠くからだからはっきりは見えないけど金髪が風になびいて綺麗だった。


「綺麗な人?」

「あー…、そうね。才色兼備で容姿端麗よ。家柄は王家の次に古いわね」

「へぇー…」


太刀打ちなんてこれぽっちも出来ない。

ティスは、無意識にお腹をさすった。


「ティス、最近お腹摩ってるけどお腹痛い?」

「えっ?そんな事ないわ」


無意識に摩っていたのかー…と自分を戒めた。


「あっ、モウさんとリン王子いるじゃん」

「あっ、本当ね」


モウ王子とリン様がカスロイル・アン・ウィンア伯爵令嬢をエスコートしていた。


「王子2人ってどっちの婚約者候補なのよ。あの伯爵令嬢わっ!」

「あはは。そうね」


王子2人のエスコートでどれだけ古い家柄なのかティスでも分かったって胸がズキズキ痛む。


「〜〜っ」


お腹がキューっと痛くなったからお腹を摩る。


「ティス!大丈夫?」

「うん。大丈夫よ…」


少し休めば大丈夫だと思っていたけどハイアは何かを感じた。


「ティス、お昼休みは私の部屋ね!」

「あっ?うん。分かった」


ハイアは、ティスの背中を摩ってそう言った。

ティスは素直に頷いた。


「ハイア?私よ。ティスよ?」

「いらっしゃい。どうぞ」


お昼休憩になってハイアが指定したハイアの部屋に入る。


「さぁ、これをどうぞ」

「えっ?ハイ…うっ」


口を慌てて押さえた。食べ物の匂いがティスの体を貫き吐き気を催す。


「やっぱり…」

「ハイア!」


ハイアは、確かめたかった。

ティスが妊娠をしてるかどうかの事を。


「赤ちゃんは、リン様の御子ね?」

「うん。リン様の赤ちゃん」


何処となく元気のなかったティスに比べてハイアの顔が笑顔になった。


「ティス!おめでとう!!やったじゃない!」

「ありがとうって言うべきなの?」


嬉しがるハイアに比べてティスは何処となく遠慮がちだった。


「ティス?嬉しくないの?」

「嬉しいわ!リン様の赤ちゃんだもん!嬉しいけど…」


気持ちは嬉しいのだけど素直に喜べない自分が居たのも事実だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る