36・兆候…?

第36話

「ティス…なんだか顔色悪いけど大丈夫?」

「えっ?最近寝不足気味だからかもしれない…」

「あっー…成程」


廊下でハイアが納得した顔をして洗濯物が入ってる大きなかごを持つからティスが慌てて

止める。


「ハイア、私が持つわ」

「ティスは、これを持って」


小さい籠を顎でクイッと示してティスは、渋渋しぶしぶ

持った。


「もお、ハイアがほとんど持ってるじゃないの!」

「いいのよ!私、力持ちだから!」

「そう言う問題じゃ無いと思うけど?」


ハイアと楽しく会話をしていたらお腹が引き攣った気がして一瞬顔をしかめる。


「ティス?大丈夫?」

「うん。平気よ、ゴメンネ」


お腹をさすり、立ち止まっていたのを歩き出す。


(何だったんだろう?さっきの痛みは…)


お腹を摩りながら考えたけど結論には至らないから考えるのを放棄した。


「ティス、今日の昼食楽しみね!」

「そうね。楽しみだわ」


昼食まで時間があるけど、今のしてる仕事が昼食まで終わるといいなぁー…と思っていたけど、

結局、仕事は昼食を、跨いでしまった。


「あー…残念だわっ」

「本当にね。昼食までって思ったのにね!」


いつもの裏庭でハイアと昼食を食べようとしたらまたハイアが別の用事で呼ばれてしまってティス

だけになった。


「まぁ、仕方ない。食べよう…」


そう言いながら蓋を開けてモワッと匂いがティスの鼻に付く。


「うっ…」


吐きそうになって慌てて口を押さえた。


「何?今の?」


ドクンドクンと心臓の音がじかに耳に響いて早鐘を打つ。


「気持ち悪い…」


昼食を、見て一言呟いて蓋を閉めた。


「もぉー!人使い荒いヤリー様め!」

「ハイア!もぉ、いいの?」

「うん。アレ?まだ食べてなかったの?」

「あっ!これから食べる所だよ?」


慌てて繕って震える手で蓋を開けると先程の匂いがなくなっていて安心して溜息をついた。


「さぁ、食べましょう」

「そうね、食べましょ」



月ものがふたつきも来ないのも気のせいで先程の気持ち悪さも気のせいだと感じたかったティスだった。


「ティス、大丈夫?顔が真っ青よ?」

「うん、平気よ」


笑ってご飯を口に運ぶけど味がいつもと違う気がして美味しくないと感じる。


「今日のも美味しいわねー」

「そうね。美味しいわね」


ハイアでもこの症状は黙っていると決めたティスだった。

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