16・本当の事なんて言えない

第16話

「そうよ。クッシナン王子とカルティロス王子は幼馴染ね」

「そうなんだね…」


ハイアと裏庭で昼食を食べていたティス。


「まぁ、2人は昔からあんな感じよ」

「ハイア、詳しいのね?」

「あっ、うん。小さい頃から居るから」

「そう」


ティスはそう言って昼食を食べる。

2人が幼馴染ならあの関係性は分かる気がした。


「あらっ。こんな所に捨て場所があったわ」

「!?」


後ろから声が聞こえてそのまま真上から水をかけられてビショビショになったティス。


「ちょっと、貴女達!最低ね!」

「あらっ、捨て場所があったから捨てただけ」


食べ物がダメになってしまった。

これから午後も働かないといけないと言うのに。


「最低よ!ティスに謝りなさいよ!!」

「ハイア、いいから。着替えれば良い事だから」

「そんな訳いかないわよ!」

「早く着替えて来れば〜」


笑って水をかけた侍女は行ってしまった。


「ハイア、私…着替えて来るから」

「怒らなきゃダメよ!!早く着替えて来て!」

「うん、でもハイアもよ!」

「私は少しかかっただけだから大丈夫よ!」


濡れた事より昼食を、ダメにしてしまった罪悪感でいっぱいになるティス。

家にいた時はご飯を食べれなかった事もあったからご飯が出て来る事は有り難い事だった。


「…ごめんなさい」

「ティス?」


裏庭から中に入ろうとした時にリンと会ってしまった。


「リン様」

「その格好は何?」

「えっ?」


自分のびしょ濡れの格好を見られてしまった

ティスは慌てて逃げたけどリンに捕まる。


「リン様!濡れちゃいますから、離して下さい」

「ティス!!その格好はなんだ!」


リンが濡れた格好に怒鳴りながらも周りに見せない様にティスを、包む。


「リン様が濡れてしまいますから!」

「俺の事は気にするな!お前が風邪を引く!

ヤリー」

「ランティス嬢、これを」

「ありがとうございます。ヤリー様」


ヤリーからタオルを渡して貰ってリンに頭を下げて自分の部屋に戻ろうとしたらリンに腕を掴まれた。


「どうして、そうなったか後で聞くからな」

「えっ?自分で転んでしまったんです!」

「ティス!」


名前を呼ばれたけどティスは、再び頭を下げて

自分の部屋に向かって逃げた。


「リン様に、本当の事なんて言える訳ない!」

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