13・2人だけの約束

第13話

「リン様!今っ!」


急にリンがティスの頬にキスした事にティスは

アタフタした。


「んっ?これっ?」


リンはもう一回ティスの頬にキスをした。


「!!」


今度は夢じゃなかった。

本当にティスの頬にキスをしてティスの顔が

真っ赤になり顔を隠した。


「リン様!私に何をするのですかっ!」

「ご褒美。いつも頑張っているティスにね」


リンがティスの両手を握って退かすと顔が真っ赤なティスが現れてリンは笑う。


「可愛い、ティス」

「リン様!意地悪ですっ」


両手をリンに握られていて顔が隠せないし、リンの言葉を本気にしちゃいけないと思っているのに嬉しいと思ってる。


「リン様!仕事はありませんか?」

「俺は隣国の王子だからない。招待されてるだけだしね」


恥ずかしいから慌てて会話を変えるけどリンは

隣国の王子様だったと思い出した。


「あっ…。いつかは帰るのですよね」

「そうだね。でも、今の所帰らないよ」


それを聞いてティスは安心した。

“今の所帰らない”とはいつかは帰ってしまう。

目の前から居なくなってしまう寂しさにティスは

無性に淋しさと悲しさを覚えたけどこれは一時いっときの感情だと思って、振り払った。


「帰るときは俺の国に連れて行くよ」

「えっ?」


リンが笑いながらティスの頭をポンッと軽く叩いた。


「勿論、俺のお抱えの侍女としてね」

「そっ、そんな事出来ませんよ」


ティスは、コウラサン国の住人。隣国に住むなんて…出来る訳ないけど行ってみたい気持ちは溢れていた。


「リン様がいるから素敵な国なのでしょうね」

「ティス?」


ティスが窓辺に近付いてリンに背を向ける。


「リン様が生まれ育ったナウロスタニ国に…いつか」


背を向けていたのをリンの方に向いてとびっきりの笑顔をリンに向ける。


「行ってみたいです」

「ティス!」


リンはティスの笑顔を見て体がもう動いており

ティスを抱きしめていた。


「リン様っ!」

「あぁ、いつか連れて行ってやる。俺の国に」

「はい。連れて行って下さいね」


2人だけの約束。

リンとティスだけの約束。


「そして、急に抱きしめられたらビックリしますからっ!」

「抱きしめたくなったんだ。もう少しこのままで居てくれ」

「もう少しだけ…ですよ…」


ティスは何事も無かった様に言ってるが心臓はバクバクしていた。

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