12・ハイアにリンに。

第12話

「ねぇ、ランティス」

「はい?ハイア」


廊下を歩いていたらハイアに聞かれる。


「愛称はなに?」

「ティスよ」

「まぁ、可愛い愛称」


ハイアも可愛・・いと言ってくれて嬉しかった。


「ティス!おはよう」

「お早うございます。リン様」

「お早うございます」


リンに声をかけられたから2人とも頭を下げて挨拶をした。


「カルティロス様!お早うございます」

「お早うございます」


リンを見つけた侍女達が次々に挨拶に来てうんざりしたリンは、ヤリーに目配せをした。


「貴女達、仕事はどうしたのですか?」

「すいません。ヤリー様」

「すいません。今、向かいます」


侍女達は、ヤリーに言われて散らばってハイアとティスだけになった。


「ハイア、私達も仕事しましょ」

「あらっ。私はそうだけど、ティスは殿下でしょ?」

「あっ…」


ティスは、カルティロスのお抱えの侍女。

ハイアは、お辞儀をしてその場を去って行った。


「ティス、手伝ってくれ」

「あっ、はい」


ティスは、リンに言われて後に着いて行った。


「ティス、昨日の夜呼んだのに何処にいた?」

「……!!」


昨日の夜は、泥を被っていてリンの目の前に出れる訳なかった。


「申し訳ありません。昨日はハイアと盛り上がってしまいまして…」

「そうか。俺の目の届く所にいる様に」

「はい。承知しました」


ハイアに朝言われたのだった。絶対聞かれるから“私と盛り上がっていた”と伝える事。


(嘘付いているみたいで…。心苦しいけど…)


あの事を言うつもりはティスにはなかった。

はたから意地を張っていると言えばそうかもしれないけどティスにとってはこれが正常運転だった。

あの家にて召使いの様に働いて来たのだ。

だからそれが普通だと。


「ティス、これを手伝ってくれ」

「はい。リン様」


リンの部屋に入ったら本が散らかっていた。


「リン様、何か調べ物を?」

「あぁ、少しね。お願いするよ、ティス」

「はい。承知しました」


散らかった本を持って本棚に戻して…その作業をしていく間にリンは着替えをしていく。


「綺麗になったね。ありがとう、ティス」

「これが仕事ですから」


リンが笑顔で近付いて、ティスの頬にキスを送った。


「!!」

「ご褒美。ありがとう」


急のリンの頬のキスに固まってしまったティスだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る