10・初めての友達

第10話

「ヤリー様にも直に声をかけられて…」

「初日の侍女のアンタが何で!!」


初日から怒りの矛先を向けられているティス。

裏庭に無理矢理連れてこられ、嫌なが目に入る。


「あらっ、ここに泥沼があるわ」

「本当ね。生意気なアンタにピッタリじゃないの?」

「えっ?」


泥沼に徐々に近付いていきそのままティスは泥沼に向かって突き出されて泥塗れになる。


「あはははー。汚いー」

「泥沼女ね!」

「どうして…こんな事を?」


泥を被ったティスが震えながら他の侍女達に伝える。


「アンタが生意気だからよ。初日から…私達より

教養ないくせに」

「……っ」


それは本当でそれ以上強く言えなかった。


「まぁ、アンタが何を言っても侍女長は味方してくれるわ」

「その姿で城の中歩かないでね」

「本当よ。あははー」


そう言ってティスを、虐めた侍女は笑いながら

去って行った。



「……っく、ひっく…」


泣いちゃダメだ!と思っても泣きたくなる弱い自分。


「これ、どうしよう…」


全身泥だらけになって固まっていく泥が髪の毛を服にピッタリ密着していく。


「大丈夫?」

「!!」


後ろから声をかけられてビクッとしてしまった。


「大丈夫です」

「大丈夫じゃないでしょ!泥を全身に被って…」

「……」


大丈夫じゃないでのは本当だけど“大丈夫”と言うしかないと思ったけど、その人は否定した。


「コッチ来て!城の中入れて着替えられるから」

「あっ、でも…城を汚してしまう」


ティスは、その差し出された手を取るのを躊躇った。

触ったらその人の手まで汚してしまう。


「大丈夫だから!はいっ」

「わっ!」


その人が引っ張ったら泥沼から抜け出せて安堵した。


「ありがとう…ございます」

「いいのよ。私、ハイア・カル」

「私、ランティス・ヒョウです」


お互い自己紹介してティスは立ち上がった。


「見事に泥だらけね。あの人達に目をつけられたのはまずかったわね」

「あの人達?あぁ…」


数人で私を泥沼に突き出したあの人達。


「私も何で選ばれたのか…」

「ふふっ。そんな所だと思うよ?」

「えっ?ハイアさん?」

「“さん”は要らないわ。貴女と友達になりたい」

「友達?」


ランティスには“友達”と言うのが居なかったから初めての友達は“ハイア”になったのだった。

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