9・隣国の第一王子でしたよっ

第9話

「ティス、君はお抱えの侍女なんだから自信もって」


そう言ってリンはランティスの両手を握って床に座っていたランティスを立ち上がらせた。


「申し訳ありません。カルティロス様にこんな事を、させてしまいまして…」


ランティスは、慌てて謝ったらリンがジロッと

ランティスを睨んで両頬を軽くつねる。


「カルティロス様?」

「他人行儀はダメだ。俺の事は“リン”だ」

「でも、それだと…」


ランティスは、躊躇した。

ランティスにとってカルティロスはあるじ

主をセカンドネームで呼ぶのは…と思っていたらヤリーが口を挟んで来た。


「主、ランティス嬢にそれは酷だと思います」

「ヤリー、まだ居たのか」


ランティスは先程のやり取りをそのままヤリーに見られていた事に恥ずかしさが増して顔が真っ赤になった。


「可愛いな。ティスは」

「カルティロス様っ!」

「なら、“リン様”ならいいだろ?」

「それでも、そんな風に呼ぶのは…」

「ランティス嬢。もうこの王子・・承諾するまで譲りませんよ?」

「…えっ?王子?」


ランティスは、ヤリーの言葉にビックリした。

目の前に居るのは男爵令嬢の手の届かない人間?


「俺の肩書きは隣国“ナウロスタニ国・第一王子の

カルティロス・リン・ナウラリ”だ」

「ーーっ!!」


ランティスは顔が青ざめたのが分かった。


「益々、呼べません!!」

「呼べと言ってる?ティス!」

「…御心のままに。リン様」

「それで良し!」


これ以上は侮辱になるからランティスはリンの

呼ぶ名前で呼ぶ事をしたらリンはティスに

笑顔を向けた。

その笑顔を向けられてドキンッと心臓が鳴ったのは気のせいだと思う事にした。


「ティス、呼んだら来い」

「はい、承知しました」


ティスは、そう言われてリンの部屋を出て行き扉の前で数人の知らない侍女に囲まれた。


「…お疲れ様です」

「ちよっと、アンタ!!どう言うつもりなの?」

「えっ?」


ランティスにも分からない事ばかりなのに更に責められる。


「ヤリー様に直に声をかけられて、カルティロス様の直の侍女になるなんて!」

「あのっ、私…」


パーンとまた音が響いた。

頬を叩かれた音でランティスは一瞬分からなかった。


「初日からどんな手を使ったのよ!!」


侍女仲間から責め立てられるランティスだった。

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