76・喧嘩

第77話

「雅之、手土産持って行くの反対なの?」


会社で手土産に関してあまり協力的じゃなかった雅之の態度にひかかってしまった。


「反対じゃない。親父達はいらないだけの話」

「でも、手土産は礼儀でしょ?」


恭一を降ろしながら立ち上がって雅之と目線を合わす。


「そこまで深刻な話じゃないだろ?たかが手土産だぞ?別に真弥が気にする事はない」

「雅之、礼儀としての話をしてるのよ?」

「真弥はなんでこだわる」


雅之の隣に立つ相応しい妻として礼儀は大事だと思うのに何一つ分かってない雅之に腹が立ってしまって言いたくなかった言葉が出る。


「雅之は、白鳥さんと結婚したら良かったのかも知れないわね」

「真弥!なんでそこで愛羅の名前が出てくる!」

「白鳥さんなら礼儀も作法もしっかりしてるし

お父様達に歓迎されてるもんね」

「そうだな。愛羅なら最高だろうな」


売り言葉に買い言葉。


「そうよね。最高な女性よね。なら白鳥さんと

結婚したらいかが?」

「そうだな。今からでも遅くないよな」


雅之も、怒っていて久しぶりに喧嘩してる。


「あーん、あーん」

「あっ!恭一。ごめんね?ごめんね」


恭一がギャン泣きして慌てて抱き上げる。


「ごめんね。怖かったよね」

「ごめんな。恭一」


雅之が、恭一を触ろうとしたから避けた。


「真弥!」

「白鳥さんが良いって言ったでしょ?自分の言葉に責任もって」


本当はこんな事で喧嘩したくなかった。

たかが土産物。されど土産物。


「真弥、本当に愛羅と結婚になるんだぞ?」

「それはそれで良いのかもね」


明後日お祖父様とお父様に会うのにこんな気持ちじゃ会えない。


「雅之、私は辞退するわ」

「真弥!ここまで来て何を言い出す」


だって言ったじゃない。

“愛羅は最高の女だって”その口で。


「今日は恭一と寝ます。ご飯は勝手に食べて」

「真弥!!」


涙は見られたくないから私は恭一と去る。


「相容れない私達なのかもしれないね…」

「ママ?」


恭一を抱きしめて廊下で涙が溢れた。

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