70・事の顛末

第71話

「雅之の子供を産んで雅之と育ててるからっていい気にならないでね!」

「……っ」

「井口と白鳥の後継者の子供。貴女にそれが継げるの?両家の淑女として後継者の嫁として立てるのかしら?」


何も言えなかった。

私は、何も持ってない。

一般家庭に生まれて大学時代に大手の井口(株)の息子とは知らずに付き合った。


「私の何処を好きになったのかしら?」

「そういう所だな」

「えっ?」


声がして振り向いたら男性が子供を抱っこして立っていた。


「暗くしてなにしてる?真弥」

「マーマ」

「あっ。恭一、雅之、お帰りなさい」


恭一が私を目掛けて突進してくるから受け止めて抱きしめる。ちょっとよろってしちやったけど。


「何があった?」

「何もないわよ。いつも通りよ」

「…湯呑みが2個ある。誰か来ていたな」


テーブルに出しっぱなしの湯呑みに慌てたけど

もう遅かった。


「誰が来た?」


仁王立ちしてる雅之に逃れられないと思って

こと顛末てんまつを話す。


「愛羅ー!!真弥、気にすんなよ!」

「うん…。でもね」

「また“私は何も持ってないから別れる”とか言い出すのか?」

「!!」


なんで当てちゃうの?この男性はっ!!


「別れようなんてもう思ってない。結婚したい。

でもね、でも…」

「真弥!恭一と一緒に俺の嫁に来い」


雅之が手を差し伸べる。

その手を取ったらもう逃げれない。


「雅之…」


手を取りたいから手を掴む。


「愛羅の事は俺の両親の前でキッチリと償ってもらう。真弥を悲しませたからな」

「雅之、泣かされてないから大丈夫よ」


雅之は有言実行派だからどんな仕返しするか分からないからここで止めなくちゃ!!


「私なら平気だから」

 

恭一を抱っこしていた私に雅之は自分が恭一を抱っこして恭一に見られない様に私にキスをする。


「んっ…」

「真弥、恭一に聞こえるよ」

「だって…こんな」


強くて甘いキスなんてズルイ。


「真弥、今日デリバリーにしよう」

「うん…」


私の気遣いの為の優しさだね。

ありがとう、雅之。

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