64・モヤモヤするよ…

第65話

「雅之、そこのお嬢さんは関係ないだろ?」

「父さんに紹介するのに関係なくはない。結婚する相手は俺の隣にいる真弥だ!」


雅之のお父様が来訪してきて言い争っている。


「雅之さん、お父様の意見も聞いてみないと。

何か用事があって来てるんですから」

「父さんの用事は下らない。どうせいい加減な話だ」


雅之は足を組んでそっぽを向く。


「雅之、愛羅さんがお前の子を身籠ったんだぞ?父親らしくしないか!」

「えっ!?」


それを聞いて血の気が引くのが分かる。


「……その話は本当ですか?」

「またいい加減な事を。愛羅から聞きましたけど俺じゃないですよ」


雅之の言葉を信じる。信じてる。


「雅之!!直ぐに愛羅さんの所に行くんだ!」

「父さん、いい加減にしてくれ!俺の子じゃないって言ってるだろ!」


雅之とお父様が再び言い争っていて止めないと

いけないのに遠く遠く声が聞こえる。


〔愛羅さんが身籠った〕


誰の子?

雅之の子供?


「そんな訳、ないじゃないの」

「…!!」


入り口に腕を組んで立っていたのは社長だった。


「母さん!」

「裕子!どうしてここに」


雅之もお父様も2人共、社長を見て社長はお父様の隣に座る。


「愛羅さんが妊娠?そんなデマ、可笑おかしいわ」

「裕子、愛羅さんの口から聞いたんだ」

「はぁー…。あなた」

「はいっ!!」


雅之のお父様が借りて来た猫みたいにピシッと

背筋を伸ばす。


「雅之も男よ?愛羅さんを抱いた事だってあるでしょう…」


雅之、図星突かれて小さくなってる。

白鳥さんを抱いた事だってある事に傷付く自分の胸。


「計算上、あり得ないわ。今身籠ったなら雅之は裏切って抱いた事になるわよ?」

「絶対、抱いてない!!」


雅之がそう言ってくれたけどモヤモヤが残る。

これは自分で消化しなきゃいけない気持ちなのに

消化出来なそう。


「真弥、信じてくれるよな」

「嫌っ、触らないで…って」


慌てて口を塞いだ。

傷ついた目をした雅之。


ごめんなさい。今は私に触らないで。

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