62・帰って来たよ

第63話

「ただいま…」


恭一と共に雅之と住んでいたマンションに舞い戻り恐る恐る入ったら出て行ったリビングもキッチンもそのまんまだった。


「あっち、あっち」

「はい。はい」


抱っこから降ろして恭一は自分のお気に入りの

場所を知っていてコロンと寝転がった。


「恭一のお気に入りの場所ね」

「うん。うん」


ゴロゴロしていて嬉しがっているから今の内にと自分が使っていた部屋を見たらそのまま維持されていた。


「雅之…」


私達がいつ帰ってくるか分からないのにこのまま現状維持をしていてくれた事に嬉しく思った。

リビングに戻ったら恭一はスヤスヤ眠っていた。


「ふふっ。安心してるのね。恭一」


恭一の髪の毛をかき上げて肌掛けをかけてからキッチンに向かう。


「これもそのまま。雅之…」


キッチンに3人分がそのまま置いてあった。

綺麗で使ってない事がよく分かった。


「なに食べていたのかしら?」


雅之、離れていた間きっとろくな物食べてないわよねと思って冷蔵庫開けたら見事に空っぽ。


「食材から買い出しね…」


冷蔵庫を閉めて恭一を見た。


「起きたら一緒に買い物に行こう」


ソファーに座って伸びをする。


「んっ〜〜〜。いつの間に居心地が良くなったんだろう?」


不思議に思っていたけどいつの間にかなんだよね。


「少しだけ。少しだけ」


ポカポカ気持ちよくて目を瞑って少しだけのお昼寝。


「………」

「起きたか?」


いつの間にか雅之が帰って来ていて膝枕されていた。


「雅之、おかえりなさい」

「ただいま。気持ち良さそうに眠っていたから堪能していたのに」

「人の寝顔、堪能しないで」


笑って誤魔化した雅之。


「そうだ、ご飯!っと」

「俺の腕から逃れられる?」


起き上がったから立ちあがろうとしたら腕の中へ。


「逃げれる訳ないじゃん」

「ならここにいろ。俺の腕の中に」

「これからはいるよ」


雅之が帰ってくるのが私の居場所なら私はそれを守りたい。


「雅之、大好きよ」

「お前っっ、俺の忍耐試してるんだろ?」


忍耐?なんの事よっ

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