57・「結婚します」

第58話

「母さん、父さん…あのね」


言葉に詰まるけど言わないといけない。

“雅之が恭一の父親”だって。


「お義父さん、お義母さん、お話があります」

「その前にいいかね?」

「あっ、はい」


いつの間にか母さんが父さんの隣に居て父さんが話し始める。


「子供を産む決意をして帰ってきた我が子に父親は誰だっ!!って聞いたら何も答えなかった」


雅之も、私も黙って聞く。


「頑固な娘だからきっと口を割らないだろうと。

ただ一回だけ寝惚ねぼけた時に」

「……雅之君の名前を言ったの」

「!?」


娘の私も衝撃すぎる事実を暴露してくれるってどう言う事ですか?


「だから父さんとね、恭一は雅之君との子供なんだなぁってね」

「申し訳ありませんでした!今まで父親を名乗らずに来てしまった事。真弥さんに負担をずっとかけていた事」


雅之が私の両親に土下座して謝ってる。


「父さん、母さん、雅之さんだけが悪い訳じゃない!私が勝手に産んで黙っていたの!」


私も土下座して謝る。


「真弥、恭一に両親が揃って良かったな」

「…うん…」


両親の温かい大きなのに包まれて泣き、

自分勝手に育てて来たのに助けられた。


「雅之君、ご両親には?」

「これからです。唯、父が一筋縄では…と」

「そうか。会長は手強いな」

「はい」


恭一と雅之を見てもきっと頷かない気がする。


「真弥、証人欄書くんでしょ?」

「えっ?あっ、うん」


雅之、どこまでウチの両親を手玉に取っているのか分かりやしない。


「緊張するな。これ」

「あなた、失敗は許さないわよ」


母さん、父さんにプレシャーはやめてあげて。


「よし、書けた」


父さん、よく耐えました!!


「ありがとうございます。これで出して来れます」

「ありがとうございます。お父さん、お母さん」


改めて御礼をと背筋を伸ばす。


「今まで育てて来てくれてありがとうございます。これから先、雅之さんと恭一と力合わせて生きていきます」


両親に向ける感謝の言葉。

精一杯の私からの言葉を受け取って下さい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る