55・真弥の両親にご挨拶〜1〜

第56話

「んっ…」

「起きたか?」


心地よく耳を通り抜ける声にスリッと顔をこすり付ける。


「本当に寝起きは悪いのな」

「!?」


慌てて飛び起きたら隣で笑っている愛おしい

男性。


「……よう」

「おはよう」


あれっ?雅之がキッラキッラ光って見える?!


「ルームサービス頼もう。その間に風呂行って

こいよ。それか一緒に入る?」

「一緒には入りません!!」


あははっと笑って雅之はベットから降りて

さり気なくキスをおでこにして部屋を出て行った。


「カッコよく見えるーー!!」


もだえました。

悶えてゴロンゴロンしていたらそれを雅之に

バッチリ見られていて恥ずかしかった。


「母さんから電話あってもう1日預かるからって」

「えっ?社長から?恭一懐いているって事!?」

「そうみたいだな。さすが母さん」


お互いお風呂も終わって朝食を部屋で食べていたら雅之からそんな事を聞いた。


「こうやって離れていくのかしら?寂しいな…」

「ならさ…」


雅之が対面に座っていたのに立ち上がって私の隣に来た。


「雅之?」


左手を触って指に重みが乗る。

えっ?まさかーーーー。


「俺と結婚して、家族作ろう」

「……っ」


その言葉は言われないかと思った。

だって勝手に産んで逃げてまた逃げて自分勝手

すぎるのに…。


「俺じゃ不服ふふく?」


首を横に振る。

両手で口を押さえてるから指輪まで涙で濡れる。

私の方が不服じゃないの!!

違うって言葉に出したいのに上手く伝えられなくってごめんなさい。


「雅之…は…い…」

「今度こそ、逃がさない。逃げても捕まえる」


手を絡めて抱きしめてキスを交わす。


「真弥の所だけだよ。記入」

「えっ?記入?」


まさか、まさかねぇー…。


「婚姻届」

「真弥のご両親に会うのは今日って言ってあるから食べたら着替えて行くぞ」

「雅之ーーー!!」


勝手すぎる!!

今日、両親に会うって。


義理父おとうさんが今日しか時間なかったんだ」

「えっ?」


雅之の方が社長で忙しいはずなのに、父の事を優先してくれたの?

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