52・お互いにゴメン

第53話

「何か飲むか?」


そう言われて首を横に振る。


「真弥、俺は真実が知りたい」


真実を言えばいい事。


「恭一は貴方の子供なんです」


そう言えばいい事なのに言えない。


「…恭一は真弥にそっくりだよな。笑った顔、

怒った顔は…まだ見てないや。眠ってる顔なんて特に似てる」

「寝てる顔似てるなんてどういう反応して良いか困る」


本当にこの父親は…。


「真弥にどこもかしこも似ていていいな。

でもさ、似てない所も、あるよな」

「あるわね。目元なんて雅之そっくり…!!」


笑って答えたら名前を出していた。


「雅之…あのね…」

「…ごめん!」


その“ごめん”は何?

勝手に産んだから後は勝手にしてくれのごめん?

俺の子供じゃないの疑いのごめん?


「真弥、勘違いすんなよ…」


雅之から距離を取るけど腕を掴まれてしまい抱きしめられる。


「ごめんなさい。勝手に産んでしまって…私、私…迷惑かけないから。雅之に迷惑かけないで

これから恭一と…」

「なんでだよ!!」

「えっ?」


雅之が怒って私を更にキツく抱きしめる。


「嬉しいに決まってんだろ!“ごめん”は何も知らないでいた俺を許して欲しいの“ごめん”だ!」

「雅…之。許してくれるの?勝手に産んだのに」


ゆっくりと雅之の背中に両手を回して抱きしめる。


「それは俺の方だ!!お前と喧嘩別れしたって思い出さない事はなかった。真弥が恭一を連れていた時は俺の幼い頃に似ていたからビックリしたんだ」

「雅之…まさか!!」

「もう、知っていたよ。俺の可愛い奥さん」


軽く私にキスをする。


「真弥からこの唇から聞きたかった。“恭一は

俺の井口雅之の子供”ってね」


知らなかったのは私だけって事?


「なら言ってくれればいいのに!!」

「言った所で真弥は言わないだろ?」


図星を突かれました。



「俺の子供を産んでくれてありがとう。

俺の子供を育てて来てくれてありがとう。

これから俺と一緒に育てよう」

「………はい…」


お互いの同じ未来を見て込めて優しくキツく抱きしめあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る