51・皆んなの前で

第52話

恭一は、雅之と喧嘩別れしてから身籠みごもった赤ちゃん。


「ねぇ、いつから?」

「愛羅!いい加減にしろよ!」

「雅之は黙っていてくれる?」


白鳥さんが雅之に噛み付く。

答えなきゃいけないのに震えて言葉が出ない。


「ねぇ、どうなの?」

「それは…」


恭一は間違いなく雅之の子供なんだけども、知られたくない。


「愛羅!いい加減にしてくれ!それは父さん達の前ですればいい話だろ?ここで話す必要なんてない!」

「…そうね。ならお祖父様達の前で話してね」


白鳥さんはわらいながらオフィスから出て行った。


「真弥、大丈夫か?」

「あっ…。うん…」


雅之に支えられて初めて気付いた。

私の足は震えていた。


「真弥、さっきの話は…」

「……うん……」


雅之に言わないといけない雰囲気に飲まれる。

覚悟が決められない。


「恭一は?」

「雅之のお母様の所よ?」

「ならいいな」


私の手を引っ張ってオフィスを出る。

車に乗って何処かのホテルに連れて行かれた。


「真弥はフォーマル服をいつも着こなしてるからそれで大丈夫だ」

「ここは?」

「久しぶりに2人で外食しよう」

「えっ?」


エスコートされてレストランに入って行く。

緊張するけど雅之に恥をかかせない様に背筋を

伸ばして。


「真弥、久しぶりなのに、綺麗だな」

「ありがとう。緊張してるけど」


美味しかったしか味が分からない。

終始思ったのは恭一にも食べさせてあげたいと思った。


「恭一の事か?」

「うん。恭一にも食べさせたかったなぁーって」


笑って答えたら雅之も笑った。


「いつでもどこでも恭一の事だな」

「当たり前よ。恭一の母親だもん」

「なら、父親は?」

「父親は…」


雅之が真剣な目で私を見てる。

ずっと隠していた事。

喉まで言葉が詰まってる。

“父親は貴方よ”って言えば済む事なのに怖い。

私…怖がっているんだ。


「真弥、場所を変えよう」


そう言われてエスコートされてこの上にあるホテルの部屋に向かう。


覚悟を決めよう。

どんな反応されても。

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