49・「好き」「好きだよ」

第50話

「何を勘違いしてる!!」

「だって…」


愛羅あいらさんと同棲はしないにしても奥さんにはするんでしょ?

キスで誤魔化そうとするなんて…。


「泣きながら言う事じゃないだろ?」

「雅之…」


雅之が私の涙を唇ですくう。

甘えてもいいの?

甘えちゃダメだよね?


「いつから甘えなくなった?大学時代は甘えてくれていたのになぁー」


私を再度抱きしめて頭を私の肩に乗せる。


「甘えたら1人で立てなくなっちゃう…」

「そしたら俺が支えて一生甘やかす」

「えっ?」


支える?一生甘やかす?

えっ?まさか…まさか…!!


「……っ!!」

「鈍感だな」


雅之が笑って私のおでこにキスをする。


「俺の大事な奥さん。気付きましたか?」

「だって…だって…」


大事な奥さんって…。体面上じゃなかったの?

私は偽装・契約結婚の妻だったはず。


「待って、ついていけないよ」

「最初から言ってる。お前は、真弥は大事な

奥さんだって」

「だって、最初…」

「あれは、お前を手に入れる為」


なら、なら言ってもいいの?

甘えてもいいの?

甘えちゃいけないと思っていた。


「雅之、好きよ。大好きよ」

「やっと素で聞けたー!!」


素で聞けたって何?

私、言っていたの?いつよっ!!


「…溶ろけている時に俺に“好き”って。だから俺も…」


雅之が私の耳元で囁く。


「真弥、好きだよ」


また、雅之と両思いになれて嬉しい。


「で?いつ、引っ越してくる?」

「引っ越しはしないわよ!!会社から遠くなっちゃうもの」


今働いている会社から遠くなってしまうのは嫌。

だから引っ越してはこない。


「真弥、お前の働く場所はここだぞ?」

「えっ?」


雅之が書類を渡してくれて封筒から開けた。


『辞令

   草野真弥くさのまや

井口株式会社の経理・秘書窓口に移動を命令する』


辞令の書類だった。


「!?どう言う事?」

「原口は俺の母親だ。旧姓で会社を立ち上げてるんだよ」

「なっ!!」


私はずっと隠れてるつもりで隠れて居なかったって事?

まぁ、雅之から隠れられていたから万々歳ばんばんざいとしておこう。

あれっ?よくない?良いっか。

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