48・勘違い??

第49話

愛羅あいらさんと同棲するのだから出て行って下さい〕


そう言われて心が苦しくなって逃げた。


「雅之……」

「真弥、心配したんだ!!」

「……なさい…」


心配してくれたの?

偽装・契約結婚の体面たいめんだけの妻に。

雅之の胸の中から抜け出て笑う。


「白鳥さんと同棲してるんでしょ?だから私を

心配しちゃダメだよ。未来の…奥様に…」

「?。父の秘書の事が言っていた事だろ?あり得んな。俺の奥さんはもう決まってる」

「……っ」


“決まってる”言葉に胸が痛むけどまだ立ってられる。


「雅之、私…社長にご挨拶して帰らないと…」


社長にご挨拶して帰らないといけない。

この場を早く立ち去らないと泣いてしまう。


「俺、社長だよ?」

「えっ?!」


次期社長の位置じゃなかったの?

社長になるには結婚じゃなかったの?


「雅之、本当に?本当に社長に?」

「あぁ。井口雅之社長です」


そう言って名刺を貰ったら肩書きに“社長”。


「雅之、おめでとう!!」

「就任して1ヶ月経ってるぞ?」


TVも見てる暇がなかった。

きっと画面越しに雅之を求めるから見てなかった。


「TVも見てなかった。仕事と家の往復だけだから」


何処に居ても雅之を求めてしまうから何処にも

行けなかった。


「改めまして、井口雅之社長。おめでとうございます」

「ありがとう。いつ来る?」

「はっ?」


いつ来るとは?何かしら?


「俺の家にだ?2.3日で引っ越して来い。恭一に

会いたい」

「……」


また雅之の家に引っ越す?

そんな我儘わがまま甘える訳にはいかない。


「雅之、奥様になる人に悪いわ。私達はもう大丈夫だから」


夢にまで見た雅之の温もりをもう一度感じられた。

それだけでもう生きてられる。


「奥様になる人?何言ってんだ?」

愛羅あいらさんでしょ?だから忘れて?」


笑ってかばんも持って雅之に向き合う。


「お幸せになって下さい」

「真弥!何を勘違いしてる!!」

「えっ?」


勘違い?

何処どこがどう勘違いなの?

そう思っていた時にはもう唇を塞がれていた。

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