42・何気ない写真

第43話

宮城さんから紹介してもらった会社は高級ビル

の中にあるワンフロアー全て使ってある会社でした。


「社長、書類ここに置いておきます」

「もう、終わったの?」

「あっ、はい」


前の会社で働いていた時はもっと倍の書類を就業時間までに終わらせないといけなかったからパソコン音が、響いていた。


「前の会社は貴女が居なくなっててんてこまいかもね」

「そんな事ないですよ。私より凄い人は沢山いましたから」


社長から次の書類を貰ってディスクに座る。


「草野さん、お昼休憩でしょ?私と一緒に食べましょう」

「はい。社長」


社長は何かと私を気にかけてくれてる。


「子供の件もありがとうございます。とても助かります」

「あらっ。親子が貧窮ひんきゅうしてるのよ?見逃せないでしょ!」


社長のご厚意でここの会社の託児所に入れる事になった。


「恭一君、見せてくれるかしら?」

「あっ、はい」


私は携帯を差し出して社長に恭一を見せる。


「本当に、可愛いわねー。“ばあば”って呼ばれたいわー」

「社長!“ばあば”は早いと思いますよっ」


冗談まじりで私を笑わしてくれる社長に有難いなって感謝する。


「本当に可愛いわね」

「はい。可愛いって言うと最近は怒りますけど」


可愛いよりカッコいいって言って欲しいみたい。


「社長?」

「あっ、この男性は?」


社長が見ていたのは、雅之と恭一のツーショット写真だった。


「この子の父親です。でも、自分の子って知りません」

「何故?」


ここまで言って良いか分からないけど嘘が付けないと思った。


「喧嘩別れした時にお腹にいる事が分かったんです」

「それから知らないって事?」

「はい」


社長は頭を抱えた。何故かしら?


「その男性よりも草野さんにとって大事ね」

「はい。大事です。あっ!社長」

「いいわ。ありがとう」

「では、お先に失礼します」


食べ終わった物を、片付けて自分のディスクに戻る。


「………さぁ、どうする?」


社長がそう呟いていたのを私は知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る