40・甘える時期…

第41話

宮城さんの


「ここに住みましょう。恭一君はシッターさんに預けましょう」


有無うむを言わせない笑顔に頷いて今、宮城さんの為にご飯を作っております。


「ただいまですわ」

「おかえりなさい。宮城さん」


最初どう扱って良いか分からないキッチンに

ようやく慣れてきた。


「こんなお嫁さん、最高ですわー!!」

「ありがとうございます。お腹空きましたでしょう?作ってあります」

「嬉しいです。急いで着替えてきます」


ふっと雅之も嬉しそうに着替えに行った事を思い出していた。


「自分から逃げたんだから」


自分から逃げた。

自分から雅之の元を去った。

だから、悲しむ権利なんてないのに…悲しい。


「真弥さん、お待たせしました」

「あっ!はい。宮城さん」


宮城さんに見られてるとも知らずに私は慌てて

つくろってシチューをよそう。


「今日は、シチューですね」

「あっ!はい。寒いですから、温まるように」

「恭一君〜。ご飯だよー」


宮城さんが恭一を連れに来てくれて椅子に座らせてくれる。


「1人だったのでこんな賑やかは嬉しいですわ」

「私と恭一で良ければいつでも」


笑って答えた。


「宮城さん有給消化終わりに近付いてますのでそろそろ私と恭一出て行きます。今まで…」


宮城さんに甘えてばかりいられない。


「真弥さん」

「はい。宮城さん」


宮城さんが真剣な目をして来たから背筋を伸ばし聞く。


「経理課にいたのですよね?」

「はい。居ました」


経理課にいて計算はまぁ、得意かなって程。


「なら、わたくしの知り合いで経理が得意な人を探してるのです。真弥さんどうかしら?」

「えっ?」


願ってもない仕事の斡旋あっせんだけどそこまで甘えていいのだろうか。


「今は甘える時期です。合わなかったら辞めても

構いませんわ」

「宮城さん…」


心にみ渡る優しい言葉に涙が流れる。

私、ずっとそう言ってもらいたかった。


「よろしくお願いします」

「うふふ。試験を受けて受かると良いですわね」


あはっ、そこは通常運転でホッとしました。

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