38・探すよ〜雅之編〜

第39話

「抱いて」

「全部、終わってからな」


本当は抱きたかったけど我慢した。

曖昧あいまいに真弥を抱きたくなかった。


「愛してる」


そうささやいて今までの事以上に大事に優しく抱きたかった。


「んっ…真…弥?」


目を開けたらもう真弥と一緒に寝ていた痕跡こんせきはなく真弥が寝ていたであろう場所は冷たくなっていて時計は8時過ぎていた。


「真弥!?」


キッチンが静かでドクドクする。

俺の気のせいであって欲しい。

開けたらいつもの様に真弥も恭一も居て…。


「………」


開けて俺を絶望に落とす。

誰も居なくテーブルに朝食が、置いてあった。


「仕事か」


そう思いたかった。


『さようなら。

 ありがとうございました。

             真弥・恭一』

「真弥!!恭一!!」


朝食の隣に短い文章の手紙に血の気が引く。

さよなら?

ありがとうございました?


「真弥!!真弥!!」


急いで電話かけるも繋がらない。

何度かけても繋がらない。


《宮城!真弥と恭一がいなくなった!探してくれ》

《真弥さんと恭一君が?分かりましたわ》


宮城にも伝えたからすぐ見つかると。

自分も放り投げて今すぐにでも探しに行きたい。


「今日は昼から大事な商談があるんだ。白鳥家と合併しなくたって俺が井口を大きくしてみせる」


自分に言い聞かせる様に言葉に出す。

次期社長の重圧がのしかかる。


「真弥、恭一、パパの事を応援してれるか?」


いつの間にか震えていた。

俺はいつの間にか弱い人間になっていた。


〔雅之、おはよう。今日はね…〕

〔パーパ、はよっ。車!車!〕

「真弥…恭一…」


半年も暮らしてない。すれ違いだって多かった。

朝だって数える程しか顔を合わせてないのに

鮮やかに蘇る。


「俺は、2人がいないとこんなにも弱い人間だったのかー?」


膝から崩れ落ちて涙が流れていた。


「真弥、恭一、必ず見つける」


太腿ふとももの上に置いた握り拳に力を込める。


「真弥、恭一…パパはお前達を必ず見つけ出す。もう逃げても離さないからな」


2人が居てくれるから俺は強くなれる。

だから、必ず見つけ出す!!

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