37・忘れないよ

第38話

「ただいま」

「おかえり、雅之」


玄関から雅之の声が聞こえて迎えに行く。


「あれっ?恭一は?」

「うん、恭一は預かってもらったの」

「そう。なら真弥と2人か」

「うん。2人きりよ?」


このまま生活していくのかと思っていた。

このまま何事もなく3年生活していくのかと思ったのに明日でお別れなんて…。


「雅之、今日はね…」

「久しぶりの2人きりだな。真弥」

「……うん」


久しぶりの2人きり。楽しみたい。


「食べれなかったって言うか真弥の飯が美味いから他の食べれないや」


そう言って話してネクタイを緩めてキッチンに

向かう時の笑顔も忘れない。


美味うまそう。急いで着替えてくるから

一緒にワインな」

「そうね。呑みましょう」


よだれを垂らしそうに美味しそうに言ってくれる笑顔も忘れない。


「「カンパーイ」」


ワイングラスが音を立てて私達の食欲を添える。


「………」


美味しそうに頬張ほおばっている顔も忘れない。


「どうした?」

「えっ?なんでもない。美味しい?」

「美味いよ。いつでも振る舞ってくれよ」

「そうね」


他愛もない会話をしながら食事を終え、それぞれお風呂に入っていよいよ覚悟を決める時!!


「雅之?入っていい?」

「真弥?どうぞ」


雅之の寝室の扉を叩いて開けるともうベット上に居て本を読んでいた。


「どうした?」

「私も一緒に寝ていい?」

「!!」


驚いた顔をしている雅之。

お願い、拒まないで。


「いいよ。おいで」


手を差し出されて手を乗っけるとグイッと引っ張られて胸の中に入る。


「なかなか積極的な真弥はお目にかかれないな」

「…そんな私は…いや?」

「まさか、大歓迎だよ!」


雅之が私の両頬を包みキスを交わす。

甘いキスに忘れたくないキスに涙が溢れてきそうになる。


「雅…之、抱いて?」

「それは無理だな」


拒まれた。私に女の魅力がないから?


「全て終わってから抱きたい」

「雅…」


全て終わる前に私は貴方の前から消える。

最後は叶わなかったけど貴方の温もりは忘れないから。

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