35・噂に…

第36話

『井口雅之次期社長の結婚相手は白鳥愛羅しらとりあいらさん!お二人の関係は幼い頃からとの情報もあり』


連日のNEWSで耳にタコが出来る。


「マスコミが面白くあげてるだけだから気にすんな」

「……うん」


離れたくない…そして好きって言いたいのに。

それさえいう覚悟もない自分が傷付く理由なんてないのに心が折れそうになる。


「あれっ?仕事行くの?まだ休みが1日…」

「NEWSに出てる以上顔を出す場合があるしな。

これ以上好き勝手はさせない」


次期社長としての威厳を一瞬でまとう雅之。


「そう。遅くなるわね」

「多分な。ごめんな、真弥」


雅之が申し訳なさそうに私に謝るから首を振る。


「恭一、ママを頼むよ」

「パパ?外?外?」

「行ってくるよ」


行く前に恭一を抱っこしてそのまま玄関に行き

私はカバンを持って玄関へ。


「パパに行ってらしゃいって」

「バイバーイ」

「まだ言えないな。行ってくる」


恭一と交換してカバンを渡す時に頬にキスをされて玄関を出る雅之。


「だからそれは恥ずかしいって…」

「?」


恭一が、じっーと見ていたけど目を逸らしました。


「………」


仕事場に行く間にも街灯の画面に雅之のNEWS。

仕事場に着いても雅之の事であっちこっちで噂

が広がる。


「次期社長、狙っていたのにー」

「白鳥愛羅さんって前に来ていたわよね?」


来ておりましたね。何回か…。


「次期社長よー!!本当にイイ男よー」

「白鳥さんと似合うのも頷ける〜」

「………っ」


私で似合うなんて思ってない。

大学時代だって雅之に“可愛い”って言って貰いたくって、釣り合うように一生懸命頑張っていた。


「草野?大丈夫?顔、真っ青よっ」

「ちょっと席外します」

「うん。気をつけて」


考え事しすぎて気持ち悪くなったのかな?


「次期社長よー!!」

「本当だわー!!」


遠くで堂々と歩く雅之の隣に白鳥さんの姿を見て胸が痛くなる。


「白鳥さんよー!お似合いねー」

「本当ねー」


やっぱり、身を引くべきなの?

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