7・「偽装結婚に付き合え」

第8話

「何を考えてる?」

「……何も考えてない」


車の中で言われて素気なく答える。


大学時代の楽しかった幸せだった時の事。

もう過去の事。


「お前にプロポーズ断れてから縁談の話が多いからうんざりしてる」

「……」


私には関係ない事。

もう過去の事で私は貴方が好きだけど言葉にするつもりはない。

自分の心に蓋をして押し込める。


「…恭一って名前だったよな?」

「雅之!?恭一に、何を?」

「まだ、してない」


“まだ”って何かするつもりなの?

恭一になにかするなら雅之を一生許さない!!


「恭一は関係ないでしょ!!」

「俺と別れて作った子供だもんな。父親とは別れたのか?」

「……貴方に関係ないわ」


恭一、貴方のパパが貴方を陥れようとしてる。

ママは、もうパパの考えが分からないの。


「俺の為に尽くしていたのにな…」

「それは昔の話。今は恭一の方が大事!」

「なら」

「なら…なによ」


嫌な予感しかしない。

雅之の言葉を聞いたらダメだと口を開こうとしたら覆いかぶされた。


「ま」

「子連れで構わない。俺の偽装結婚に付き合え」

「!?」


この人は何を言ってるの?


「他の人に頼んで!!」


保育園が見えて車が停車してくれたから急いでドアを開けて車内から飛び出す。


「真弥!!」


名前を呼ばれたけど振り向かなかった。


偽装結婚なんて、出来る訳ないじゃない。


「バカッ…雅之…」


涙が流れてきて止めようとしても止まらない。

傷つかないと思ったのに自分が思ってるより傷ついていた。


「こんなで泣いていたらママ失格ね」


女からママに戻らないといけないから涙を拭くけど止まらない。

止まれと願っても止まらない。


「いつから弱虫になってしまったの?私は…」


考えなくちゃいけない事がありすぎて頭の中パンクしそう…。

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