5・待ち伏せされる
第6話
今日は朝から散々だった。
会いたくない人には会ったけど助けてくれた?と思う。
だって、朝の事は課長に怒られずに就業時間までこれた。
「違うわね…。会いたかったでしょ?」
自分に言い聞かせるようにオフィスを出る。
「やぁ、今帰りだろ?乗って」
「!!」
オフィスを出て待ち伏せされて、ご丁寧に
後ろの車のドアが開いていて乗るように
促される。
「お断りします。電車がまだありますから
そちらに乗って行きます」
「そう言わずに。草野さん?」
“どうぞ”と手ででも促されて断れるに断れない。
「駅までお願いします」
「分かった」
大人しく後ろの席に乗り雅之も後ろの席に…隣に座る。
「久しぶりだね」
「そうですね。ご健勝でなによりです」
「固い会話だなー…」
必要最低限の会話だけ。
話すとボロが出そうで口を貝の様に閉じる。
「昔は素直だったのなぁー…」
「なっ!!」
顔を横向けて雅之と視線が合う。
そらさないといけないのに。
自分を叱咤して自然にそらして窓を見る。
「真弥」
「はいっ?」
また名前を呼ばれてドキッとしながら声も裏返ったけど雅之の方を見る。
恥ずかしいけどスルーするわよ!!
「くっくっくっ…」
「笑うなら笑えばよいでしょ?」
雅之の体が震えて隠れて笑う癖を見つめる。
変わってない事に…取り残された気分になる。
「変わらないのね。…その癖」
「真弥は変わったな」
「大人になったのよ」
プロポーズされた時から考えれば大人になった。
「ちょっと!駅過ぎてる!!」
「家まで送る」
「雅之!」
無情に駅が過ぎて行く。
忘れていた。
雅之には自分勝手の所がある事を。
「本当、そういう所…自分勝手で変わらない」
「そうか?結構変わったぞ」
「自分で変わったなんて言わない」
この会話が心地よいって感じるなんてどうかしてる。
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