第11話アルファの矛盾と茜の心配

「このままシグナルまで護衛だ」

「二部隊でもなんとかなりましたね」

「まぁ殺すより生かす方が難しいからな」


 これからシグナルへと送り、 そのまま地下にある研究室で持っている情報を丸裸にされるだろう。

 武器を茜たちに持った状態で、 特型警備車に乗り込み、 サイレンを鳴らしながら前方を走る。

 真ん中に鬼の入った檻を挟んで、 後方は大槻隊長が着いてくる。

 やっと前進したように感じる。


「未来のスナイパー良かったよ!」

「あれは名シーンでしたよね~」

「銃弾を通常のに変えときましょう」


 車の中も達成感に満たされていた。

 少し早めに鼓動を打つ心臓は、 高揚からなのか不安からなのかどっちにしろ分からないので、 あまり考えずに、 鼓動を抑えようと意識を集中させた時だった。

 車がどしんと揺れた。


「何どうしたの!?」

「わからない」

「外を見てみよう」


 すると大槻隊長から連絡が入る。


「鬼がアルファを狙っている!」

「車体の上だ!」

「了解!」


 すぐさま扉を開け、 車体の上に飛び移る茜。

 俺も続いて茜に手を引っ張ってもらい車体の上に足付ける。

 すると、 アルファの鬼二体がアクリルガラスを殴っていた。

 まるで捕らえられた鬼を助けるかのような行動だ。


「撃ちます!」


 茜が一体のアルファに照準を合わせて撃ち、 腕を凍らせるが、 それも関わらずにガラスを殴っている。

 だが、 シグナルが開発したアクリルガラスにヒビ一本入れることも出来ずに雄たけびを上げる。

 するとガラスから離れ、 車から降りる。


「追いますか?」

「今はこいつをシグナルに送るのが任務だ」

「わかりました」


 大槻隊長もそう判断させたのか、 ヌークが車に戻っていく。

 俺も車に戻り、 すぐ、 大槻隊長と連絡を取る。


「大槻隊長大丈夫ですか?」

「俺は大丈夫だ」

「捕まえた鬼も無事です」

「それは良かった、 このまま移送するぞ」


 まさか鬼に仲間意識があるかのような行動に、 俺は戸惑っていた。

 時計の針が遅く鼓動は早く、 かち合わない不気味さに落ちていく感覚が酷く気持ち悪い。

 報告書に護送中に二体のアルファに襲われたこと書いていく。

 この戦いに終止符に導いてくれればいいのだが。

 護送が終了して、 地下に潜っていく鬼を静かに見送る。


「やっと緊張から解き放たれたな」

「これで鬼になる原因が分かりますかね」

「それは我がシグナルの研究員次第だ」


 大槻隊長に鬼の灰から出た薬の成分の事を話そうとしたが、 止めた。

 これは早乙女さんと隠密に調査していくと決めたことだ。


「隊長戻りましょう」

「あぁ」


 今回の捕獲作戦で被害がそんなに出なくて良かったと思う。

 俺は煙草を一本取り出して、 火を点ける。

 肺にたくさんの空気を取り込み、 吐く。

 この作業は俺の不安感を一瞬でも忘れさせてくれる大事な作業だ。

 俺たちは自室に戻り、 今日の事を報告書を書く。

 鬼が捕獲された鬼を助けようとする行動は群れを成す動物に近いものを感じた。

 共食いをする鬼には矛盾を感じる行動だった。

 何故あのような行動が出来るのか、 またどこから発生したのか。

 逃がしたアルファだったのか、 検討がつかないが、 良くないことが起こっているように思う。


「報告書ですか?」

「あぁ今回も変なことが起こったから会議室かもな」

「でも、 捕獲できたのは大きくない?」

「そうですよ~私の目への一撃!最高でした~」


 確保出来て興奮している未来と晶を他所に茜の表情は暗く影を匂わせる。

 茜は表情が他のヌークより無いように感じる。

 自分は人型ロボット、 ヌークだからと線を引きたがる茜が意見するのは、 隠密に調査している薬のこの一件以来初めての事だ。


「晶、 未来、 ちょっと外に出てもらえるか?」

「なんでよ!」

「そうですよ~」

「隊長命令だ」


 隊長命令を無視すればヌーク失格として、 破壊される。

 二人は何か言いたげだったが、 大人しく部屋を出ていく。


「茜、 今思っている事を言ってくれ」

「……」

「なんでもいい」

「隊長がしていることは、 シグナルでは御法度です」

「それは承知でやっている」

「私は不完全なヌークです。 ですが、 危機察知能力はあります」

「茜は不完全ではないよ」


 俺は茜に真っすぐ向き合って嘘偽りなく話す。

 茜が心配してたのは知っていたし、 俺はそれに答える事が出来なかった。


「私は隊長の元を去りたくないから言っているんです」

「大丈夫だ」

「なんで分かってくれないんですか!」


 茜は俺をソファーに沈める。

 涙を流すことが出来ないヌーク。

 今の茜は多分だが、 涙を流しているのだろう。

 その生温い涙を流すことが出来ない頬に手を添える。

 茜は自分が取り乱している事に気づいたのか、 すぐ俺の上から退いた。


「すみません、 忘れてください」

「いや、 大丈夫だよ」

「ただのヌークの存在が……」

「茜たちをヌークとして接する時は任務の時だけだから」

「……あなたのその優しさが、 たまに嫌いです」


 いつしか俺も茜に思った事だ。

 お互い嫌いな所が似ているのは不思議と喜びを感じる。

 外に聞き耳を立ててる晶と未来を中に入れるかと扉の前でドアノブを握る。

 扉が開いた瞬間、 二人が雪崩れ込むように入ってくる。


「出て行けって言われてだけだし!」

「そうですよね~聞き耳立てるなとは言われてないです~」

「未来!余計なこと言わないで!」


 何かと騒々しい二人だが、 心配で仕方なかったのだろう。

 あとは好奇心だろう。

 するとタブレットから通知が来て確認すると、 鬼の出現のアナウンスと会議室に赴くようにとの通達が二つ同時に来る。


「どうするんですか?」

「会議室にはリモートで参加して鬼退治にも行くぞ」

「リモートじゃなかった今までが古かったのよ!」


 特型警備車に乗り込み、 タブレットを開いて誠局長に電話する。

 すぐに誠局長は出てくれて、 状況が読めたのか、 「後で話を聞くから任務遂行に集中するように」と言って通話が切れた。


 俺はこの任務に向かう中、 心臓の高鳴りを抑えるため煙草を吸いだした。

 何か良からぬことが起きそうな予感がする。



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