第10話 陰謀

 研究室に着き、早乙女さんの部屋まで案内される。

 まるでVIP対応だ。


「あなたも暇なの?」

「生憎、 暇ではないがこうして鬼の情報を得ようと頑張っているところだ」

「まぁ、 いいわ」


 キャスター付きの椅子を華麗に操る姿は長年、 研究員やっているからか軽やかだった。

 今時珍しい紙の資料を渡してくる。


「変な微生物を見つけたの」

「微生物?」

「最初は、 偶然かと思ったけど、 どの鬼の灰にもいたのよ」

「それがこれか」


 ミジンコのようにも見えるが、 違うらしい。

 大きな角を持っていて、 カブトムシを連想させるフォルムだ。


「この微生物は見たことも聞いたこともないのよ」

「新種か?」

「そうだと思う」

「これが鬼の発生に関与していると思うか?」

「少なからず全ての灰にあったからそうだと思えるわ」


 この微生物で鬼化するのであれば、 対抗できるかもしれない。


「これで薬が出来ればいいのだけど、 何分、 秘密でやっているからそこまでは出来ないのよ」

「上と相談してみる」

「また、 制限がかかるかも知れないかもよ?それに内緒で調査してたのバレて調査が出来なくなるわよ」

「確かに……」

「上は何かを隠そうとしているのは確かなんだから慎重に行きましょう」


 早乙女に言われるまま、 俺はまだシグナルを信じてた。

 今まで疑う余地がなかったのだ。

 だが、 前回みたいに制限をかけれては鬼の出現条件がわからなくなってしまう。

 糸を切れないように慎重に手繰り寄せるみたいだ。


「焦りは禁物よ」

「わかっているが、 俺にも探求心があるもんでな」

「石橋を叩いて渡る感じじゃないと上に目をつけられたら終わりよ」

「わかった」


 研究室を後にして、 自室に向かう途中でスマホが鳴る。

 知らない番号からだが、 出てみる。


「あの~前に薬のことで聞いてきたでしょ」

「トー横の子か」

「そうそう!!」

「何があったんだ?」

「薬手に入れたから上げようと思って」

「俺以外に誰かに言ったとかないだろうな?」

「ないよ!」


 トー横で十九時に会おうと約束をして電話を切る。

 これで検査すれば、 灰から得た成分と比較ができる。

 ドキドキする心臓を落ち着かせるために煙草に火をつける。

 すぐに部屋は煙でいっぱいになり、 視界を歪ませる。

 順調すぎて逆に怖くなる気持ちも煙草と、 一緒に吸い込むんで煙を吐く。

 気づけば太陽が沈むまで、 報告書を読み漁っていた。

 もうそろそろ行くかと腰を起こす。

 茜たちに言うべきか迷ったが、 付いてきてもらおうと連絡を入れる。

 女の子と二人きりで会うのは、 色々なリスクがある。

 売春やパパ活と間違わられたらお終いだ。


「もう!いきなり集合なんてこっちの予定も考えてよ!」

「悪い」

「で、 例の女の子の薬は確かなんですか?」

「わからない。 けど、 賭けてみる価値はある」

「偽物だったらどうします~?」

「それも賭けだな」


 俺たちはトー横にある雑居ビルの間で待ち合わせをした。

 人に見られたくないとのことで、 人の気がないところを指定された。

 まぁ薬の売買が横行しているトー横では珍しくないが、 物が物だ。慎重にもなるだろう。


「この右に行った先のビルだ」

「隊長!誰か倒れているよ!」

「あの女の子です!」


 俺はすぐさま倒れている女の子に近寄り、 容態を見る。

 首に一本の切り口があり、 ぱっくりと割れている。


「すぐ救急車を呼べ!」

「了解」


 もう息はしていないのが明白だが、 薬のことを聞かねばならない。

 女の子のバッグを漁り、 薬がないか確かめる。

 誰かに殺されたのは明白だった。

 鞄の中には財布や身分証があるが、 薬らしきものはない。

 俺は薬のことを嗅ぎつけた誰かの犯行だと謎に確信してた。

 長年の勘がそう言っている。






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