第12話 昔の話

 現場に一番乗りで着き、 茜たちに武器を持たせる。

 規制線のデバイスの認識をさせて、 中に入る。


 目視で五体の鬼が確認できた。

 アルファはまだ出ていないので、 出る前に討伐するのが鉄則だ。


「五体なら一瞬だね!」

「気を抜いたらだめ」

「茜さんはしっかりしてますね~」

「固すぎるのよ!茜は!」


 皆、 自分の持ち場に着き、 各々鬼を退治する。

 五体目を浄化したあと、 ドローンで移された映像をタブレットで辺りを見渡すが感知しなかったので、

 任務終了ボタンを押そうとした時、 俺の前に影が立った。

 ふと顔を上げると、 逆光で良く見えないが、 感覚が鬼だと察知する。

 振り上げられる手を交わすため、 上体を上げるが、 間に合わない!

 茜が盾になったが、 衝撃を吸収できず、 二人で吹き飛ばされる。

 軽自動車にぶつかり、 背中を強打する。


「茜大丈夫か!?」

「私は、 左腕を負傷しました」


 見ると、 左腕は人工皮膚を裂け、 中になる鉄骨が曲がっていた。


「これでは戦いの邪魔になるので……」


 茜は左腕を引きちぎり肩から電気回路やらが裸の状態でぶら下がっている。

 その姿は人間とロボットの中間を生きるヌークの生き様みたいで、 アンバランスだった。


「片腕があれば銃は撃てます」

「茜は後方支援お願い!」

「応援を呼ぶからそれまで耐えろ!」

「了解!」


 タブレットで急応援要請を押して目の前の鬼に目を向ける。

 今まで会ったアルファより殺気が違った。

 俊敏さも攻撃力も圧倒的に違う。


「お前は何匹喰ったんだ……」


 アルファは耳を引き裂くような雄たけびを上げて周りにあるガラスと言うものを壊す。

 散りゆくガラスの破片をものともせず、 こちらに走ってくる。

 晶は落ちてきた大きなガラスを鬼に向かって蹴り飛ばす。

 アルファはガラスをたたき割り、 顔に銃弾を浴びる。

 晶が接近戦で応戦して、 近距離で撃つがどれも外される。

 だが、 茜の銃弾まで避けれずに、 被弾して思うように攻撃が出来ないと言った感じだ。

 アルファは一歩引いて、 俺らを見つめる。


「決定打が撃てない!」

「私スナイパー辞めるべきですかね~」


 晶はどこか焦っているように感じる。

 茜が負傷したからか、 それとも何かを感じているのか。

 嫌な予感がするのは、 気のせいか、 背中が痛むからか。

 またかな切り声を上げて俺らの耳を壊しにくる。

 するとビルの上からまた影が下りてくる。

 衝撃で地面がヒビが入る。


「シママキ隊長、 お久しぶりです」

「な、 人間!?」


 鬼の肩に座っているヒトが声を発する。

 その声に耳が覚えている。


「東雲か!?」

「覚えていてくれて嬉しいです」

「東雲って隊長だった人でしょ!?」


 東雲は昔、 シグナルで働いていた人間だ。

 妹が鬼になって討伐された後、 シグナルを去っていき、 その後の消息を知るものはいなかった。

 こうして目の前に何故、 東雲がいるのか分からず、 混乱する。


「何故、 鬼と一緒にいるんだ!」

「何故ってこの鬼は僕の仲間ですし」

「どうやって……」

「それは企業秘密です」


 応援まであと十五分もかかる。

 持たせるしかないが、 茜の負傷は痛手だ。


「一体のヌークの負傷に君らの名称で言うと、 アルファが二体、 厳しい状況ですね」

「どうやって情報を得ている!」

「そんなの言うわけないでしょう」


 鬼が何もせずにゆらゆらと動いていることに不気味さを感じる。


「まぁ生産性のない話より、 楽しく戦いましょう」


 東雲が俺たちの方を指をさし、 「やれ」の一言で鬼が向かってくる。


「隊長は下がってて!」

「茜のカバーをしながら戦ってくれ!」

「そんなの難しいって!」

「私は大丈夫です!」


 俺の目には東雲がこちらに歩いてくる。


「シママキ隊長は、 甘い人ですね、 ヌークなんて使い捨ての道具として作られたはずですよね?」

「ヌークは俺たちじゃ立ち向かうことが出来ない事を、 叶えてくれる希望として作られたんだ!」


 東雲の回し蹴りを交わす。

 そのままの遠心力で左足の回し蹴りをガードする。


「僕がカポエイラの使いだって忘れてましたか?」

「あぁ今思い出したよ」


 だが、 それだけではないと俺は勘づく。


「お前、 体弄ったな」

「そうなんですよ!ヌークと同じ素材で出来ているんですよ!」


 戦闘で失くした部位をヌークと同じ素材の義手や義足を着用する隊員も多い。

 蹴りを受けて分かる以前より重くなっており、 晶の蹴りより重たかった。


「(ヌークを超すか……)」


 どんな素材を使っているかは分からないが、 攻撃を受けるのではなく、 交わすのが正解だな。


「いったい何を考えているか分かりませんが、 行きますよ!」

「_っつ」


 東雲は上空に飛び、 踵落としを仕掛ける。

 後ろに後退して交わす。

 地面は衝撃で割れ、 土埃を立てる。

 煙を裂いてくるパンチを受け流す。


「っち!」

「交わすだけですか?」

「うるさいぞ」


 俺は拳を東雲の顔にぶつける。


「お前、 顔まで!?」

「足だけとは言っていませんよ?」


 そのまま腕を掴まれて、 投げ飛ばされる。

 落ちる寸前に東雲が目の前に現れ、 頭を掴まれそのまま地面に叩きつかれる。


「ほら立ってください」

「っつ!」


 頭を掴まれたまま立たされる。

 手も足も出ないとはこのことだ。

 地面に叩きつけられた衝撃でグラグラしている。

 だが、 東雲から逃れようと頭を掴んでいる腕にしがみ付くようにして、 そのまま腕挫十字固めを決める。

 顔も鉄骨にしているのだ、 腕も同じように固く重たい。

 力いっぱい肩の部分をへし折る。

 東雲は叫ぶことなく、 左腕で俺の首を掴んでくる。

 そのまま立ち上がり、 また俺を吊るすように持つ。


「そんなもんなんですね……ちょっとがっかりです」

「隊長!」

「このまま死んでください」


 首に這う指の力が増す。

 息が出来なく、 意識が遠のく。

 ふと、 一瞬だけ空中に浮いた感覚を覚える。


「シママキ!大丈夫か!」

「大槻隊長……」

「応援が遅れて申し訳ない!」


 大槻隊長が応援に駆けつけてくれたのをゆっくりと認識する。

 急な酸素に喉が驚いて咳がでる。


「大槻隊長が来ちゃだめですね」

「東雲で間違いないんだな!」

「もう忘れたんですか?まだ去って二年ですよ?それとも老いですか?」

「まだ現役だ」


 大槻隊長のヌークが俺らの前に立ちふさがる。


「多勢に無勢ですし、 大槻さんと殺しあうのはまた先でお願いします」


 そう言って、 鬼の肩に座り込み鬼と一緒に去っていく。

 俺らはしばらく空間に残った緊張感から振り払えずにいた。


「お前らはすぐ救急室に行け」

「でも……」

「後始末は俺がやる、 お前には報告書を書く義務がある」


 俺は特型警備車に肩を組んで運んでもらった。

 気が付かなったが、 額を切ったのか目の前が血で染められてた。


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