第36話

「いやー…別に深い意味はないんだけどね。ただ、蘭と寛貴に聞いたら、2人共「そんなの、まだ全然分からない」って言うから…だから美穂ちゃんはどうなのかなぁー…?って思っただけだから!」




「あ…そっか……私も……まだ全然だな……優樹君はもう決めてるの?」





―――私の1番嫌いな言葉―――





―――聞きたくない言葉―――





―――それは―――






―――『進路』―――





お母さんや先生などの大人が話し掛けてくる時は大抵この内容だ。





私は、この言葉を聞く度に自分が周りから勉強だけでしか見られてないことを思い知らされるだけだった。




勉強以外の内容で、お母さんや先生と話したことなんて本当に数えるほどしかない。





だから私は、この言葉が大嫌いだった―――…





でも、優樹君は、そんな私の気持ちに気付くよしも無く話を始める。


「ん~?僕はね……そうだな……とりあえず……どんな仕事に就きたいとかは、まだないけど、いつか結婚して、子供を作って、奥さんと子供と僕と、一般的な、でも、すごく大切な幸せを築いていきたいかなぁ…なんて」


優樹君は少し照れたように笑いながら、そう言った。

そして、また話を続けた。


「でも、行きたい大学ならあるよ。…風立大学っていうところなんだけど……知ってるかな?」



その言葉を聞いた時、私は驚きを隠せなかった。



それも、そのはずだった。



優樹君が行こうとしてたのはレベルが高いことで有名な都内でもトップレベルの私立大学だった。




「風立大学!?そんなにレベルの高いところに行くの!?」


私は驚いて聞き返した。




「うん…無謀かな?」




「ううん!そんなことないよ!優樹君なら、きっと入れると思う!」


私が勢いよく言うと、優樹君は、また、あの爽やかで優しい笑顔を浮かべて話を続けた。



「ありがとう。ところで美穂ちゃんは進路、まだ決まってないんだよね?だったら僕と同じ大学に行かない?」


私は一瞬、優樹君が何を言ってるか分からなかったけど、すぐに分かって、慌てて否定した。

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