第35話
「何でもない―――!それに、もう終わった―――!」
蘭ちゃんも、それに負けない位、大きな声を出した。
「そっか―――!じゃあ美穂ちゃん、帰ろ―――!蘭も、また明日な―――!」
「うん―――!また明日―――!」
蘭ちゃんは、ニッコリ笑って、そう叫んだ後、私の方を見てウインクして「ガンバ!!」ともう1度口パクで言った。
蘭ちゃんがお店に入って行くのを見届けると、優樹君はニッコリ笑って「じゃ行こうか」と言った。
私も俯きながらも素直に「うん…」と頷いて優樹君に付いて行った。
―――それから私は、すごく楽しい時間を過ごした―――
さっき、優樹君は蘭ちゃんの話を聞いて頷いたりしてるだけで自分からしゃべったりすることは、あまり無かったから、てっきり優樹君も私と一緒で、あまりしゃべったりすることは得意じゃないのかと思ってたけど、こうやって、しゃべらない私と一緒になると楽しい話をたくさん聞かせてくれる。
結局、私は、ほとんどしゃべれなかったけど優樹君の話を聞いてるだけで充分楽しめた。
“だから優樹君は、あんなに人気があるんだ”って思った。
しゃべるのが好きな人と一緒の時はニコニコして、その人の話を聞いてあげる。
あまり、しゃべらない人と一緒の時は自分がたくさん面白い話を聞かせてあげる。
人気者の人にも人気者じゃない人にも分け隔てなく楽しい時間を贈ろうとしてる。
でも、そんな優樹君の話にも、たった1つだけ聞きたくない、耳を塞ぎたくなるような話があった。
…それは…
「あっ!ねぇ、そういえば美穂ちゃんってさ―――…進路とか、もう決めてる?」
私が優樹君の口から、その言葉を聞いた時、私は今までの楽しい気分がいっきに下がっていって一瞬、自分が硬直してしまったのが分かった。
「……えっ?……」
私は、慌てて平然を装って“何で、そんなことを聞くの?”という意味の「えっ?」という言葉を発した。
優樹君も私の「えっ?」という言葉に込められた意味を察したようで話を続けてくる。
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