第34話
確かに、まだ「優樹君」と呼ぶのは少し緊張するけど、それでも「青山君」と呼び間違えることはもうなかった。
それは優樹君も一緒みたいで、私のことを「菊地さん」と呼び間違えることは無かった。
優樹君に「美穂ちゃん」と呼ばれる度に、やっぱり少し緊張したけど、その度に、何か昔に戻ったような感覚になって嬉しかった。
そんな感じで私達は、いつの間にか結構歩いてたみたいで、気付いたら私達は近所の大型スーパーの前まで来ていた。
すると蘭ちゃんは思い出したかのように大型スーパーを指差しながら言った。
「あっ!忘れてたー!あたし買わなきゃいけない物があってんだ!だから、ここ寄ってくから2人共、先帰っていいよ♪」
「えぇっ!?」
私は驚いて声をあげた。
「うん。だからゴメンネ?2人共☆じゃあねー★バイバーイ♪」
「ちっちょっと待って!」
私はそう言って、お店の方へ向かって行く蘭ちゃんを走って追いかけた。
「ん?なぁに?」
それに気付いた蘭ちゃんは足を止めて振り返る。
「ちょっ…ちょっと待って…買い物なら私も付き合うよ…?」
「そんなのだめだよぅ。それじゃあ優樹が寂しいじゃんー…だから美穂ちゃんは優樹と帰ってあげて♪」
「…でも…」
たとえ今日、今までより、ほんの少し親しくなったからって昔みたいに仲良くなった訳ではない。
だから仮に優樹君と2人で帰ったって、きっと沈黙続きだ。
それに仮に話し掛けられたりしたって緊張し過ぎて、ちゃんと返せないのが目に見えてる。
…第1、蘭ちゃんは私が優樹君のこと好きなのを知ってるのに何で、こんなことをするのだろう?
私は、そう思いながら蘭ちゃんを見た。
すると蘭ちゃんは私の考えを読んだかのように私の耳元で小さな声で「美穂ちゃん、ガンバ!!」と言った。
そこで私はやっと分かった。
―――蘭ちゃんが、わざと優樹君と私を2人きりにしようとしてることに―――…
そんな時だった。
「ね―――!2人で何、話してるの―――?」
優樹君が大きな声で私達を呼んだのは
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