第33話

私と優樹君は、また、お互いの顔を見合った後、それぞれ名前を言いあった。




「……美穂…ちゃん?」

「……優樹…君?」



私達の声は、ほぼ同士に重なる。





…でも優樹君は確かに言った。





「美穂ちゃん」って。





優樹君に『美穂ちゃん』なんて呼ばれるの何年ぶりだろう。





でも、昔と一緒じゃない。





昔と比べて声変わりして明らかに低くなってる声で発せられた『美穂ちゃん』という言葉は、昔のように“かわいい”ではなく男性の色気までもを醸し出していた。





私の声もそうだ。


昔より微妙に低くなった「優樹君」という声が響く。




でも、確かに感じたんだ。





お互い昔より声は低くなってるけど




それでも私は確かに感じたんだ。





―――話さなくなった10年近い年月が物凄く速いスピードで巻き戻されて昔の3人で何の遠慮もなしに、しゃべってた日に戻ったような気がしたんだ。





―――スタート地点に戻った気がしたんだ―――…







私と優樹君は、その後、お互いの顔を見合った。




そして2人で笑いあった。





「よーし!それでいいの!ちょっとぎこちなかったけどね(笑)じゃあ帰ろっか!」



蘭ちゃんが満足そうに言う。




「うん!」



私も負けない位、元気よく返事した。






―――すごく爽やかな気分だった―――





―――何か、ずっと心の奥底に引っ掛かってた物が取り除かれたような―――





そんな感じのスッキリした気分だった―――







「それでさー」




「うそっ!?マジ!?」



それから私達は他愛もない話をしながら帰った。




でも私達と言っても、ほとんど優樹君と蘭ちゃんがしゃべってて、私はほとんど聞いてるだけだった。


でも、それでも充分過ぎる位に楽しかった。






でも私は、その間に優樹君のことを「優樹君」と呼ぶのに慣れてきた。

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