第13話

「ありがとうございます!…あの…先生、私もう終わったんで帰っていいですか?」




「そうねぇ……あらっ!まだ菊地さん、やってるんじゃない?佐々木さん(モデル)がいないと書けないから菊地さんが終わるまで待っててあげてくれない?」



佐々木さんは、それを聞いて一瞬“はぁっ!?”って顔をしたけど絵に夢中になってた先生が、やっと顔を上げたので佐々木さんはひきつりながら、やっとの思いで笑顔を作った。



でも先生は、その事に全く気付かずにニッコリと微笑んでる。




「…分かりました…」



そう言った後、あからさまに私の方を見てにらんでくる;





それからみんなは1人、また1人と終り、どんどん帰っていくけど、しばらくぼーっとしてた私は当然、授業中になんかできなくて、こうやって放課後2人だけで残ってる訳だ。







前では佐々木さんが何も言わずに私をにらんでる;



“早く書かなくては!”そう思って、あわててシャーペンを進めた。







カリカリカリカリカリカリカリカリ…







「…できた…」



やっとの思いで佐々木さんの似顔絵ができた。



でも私が大急ぎで書いた佐々木さんの似顔絵には、佐々木さんの美しさなんて欠片もなくて下手な絵だった。




佐々木さんは、その絵を見て一言

「…下手ね…」

とだけ言った。



「…ごめんなさい…」




「…まぁいいわ。書いてしまったものは仕方ないし。それより私、これから習い事なのよ。一流の有名な先生が教えてくれるの。だから遅刻したくないわ。だから早くその絵、先生に渡してきて。先生は確か準備室にいたはずよ」





いわば強引に引っ張られ私は美術準備室に行った。







「菊地さん、やっとできたのね。今度はもっと早く書くように気をつけない。あなたが遅いと、あなただけではなく佐々木さんに迷惑をかけることにもなるのよ!」




「…すみません…今度から気をつけます…」




でも佐々木さんは…


「いいんです。私なんかが少しでも菊地さんの上手な絵を書く役に立てたなら」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る